2012年11月25日

学校耐震化27年度完了求め 文科省が異例の要請 高知市・須崎市

 
岡ア高知市長に、学校耐震化早期完了を要請する富田企画官(11月13日)
耐震性が確保されていない公立学校を、平成27年度までの早い時期に耐震化完了させる取り組みをすすめる文部科学省は、進捗が全国平均より大きく遅れている37自治体を直接訪問し早期完了を要請。県内では高知市と須崎市が該当し(※)、11月13日に同省施設助成課の富田大志企画官が岡ア誠也高知市長、楠瀬耕作須崎市長と面談しました。

高知市に対して富田企画官は「24年度末に全国は90%が完了し、27年度はほぼ100%になる見込みだ。学校耐震化は非常に緊急性が高い。有利な財源措置がある27年度末までに済ませたほうが自治体財政にも有利。大阪府高石市は20年度は全国最下位、トップのリーダーシップで22年度にすべての学校(51棟)の耐震化を完了させた。財政的にも人的にも工夫して取り組んでいる」と、首長が指導性を発揮し、短期間で完了させる手立てをとることを求めました。

岡ア市長は「技術者不足もあるが、夏休み中しか工事できないのが一番の問題。前倒しの努力はするが27年度完了は難しく、どうしても残る。授業中に工事すれば、できないことはないが学校現場の反対がある。有利な財源措置の延長を求める。予算を言い訳にするつもりはなく、施工できればどんどん予算は組む」などと回答しました。

これに対し富田企画官は「児童生徒の学習環境を考慮せずに工事している自治体はない。その中で業界団体とよく相談し、技術者を確保して集中的にやている」と述べました。

岡ア市長の「学校現場の反対があるので授業中に工事ができない」という発言は、耐震化の遅れの責任を学校に転嫁するものであり、南海トラフ地震で児童生徒の命を守る前提となる校舎の耐震化の早期完了を求める保護者の要望も反映しているとはいえません。今後に波紋を広げそうです。

富田企画官の話 他の自治体でも事情はありつつもやっている。岡ア高知市長も前倒しを検討すると言っていたので27年度完了にむけて努力してくださると受け止めている。私たちも引き続きフォーローアップしていく。

※高知市の24年末残=71棟(達成率67%)、須崎市=20棟(52・6%)

文部科学省の要請内容

11月13日、文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課の富田大志企画官が、岡ア誠也高知市長に平成27年度までに学校施設耐震化完了を求めた発言要旨を紹介します。

富田企画官 文部科学省は学校耐震化が非常に重要で緊急の課題であることから、特に力を入れて対応している。27年度までのできるだけ早い時期に耐震化を完了させる目標に基づき施策をやっている。

全国的には24年4月現在で84・8%の耐震化。今年度の予算を実施すると約90%まですすむ見込みで、このペースでいくと平成27年度までに100%近く達成できるのではないか。

何故27年度か。非常に緊急性が高いということ、地震防災特別措置法で国庫補助の嵩上げ期限が27年度末までとなっているから。延長されるかどうかは未定で、できるだけ今の時期にやっていただいたほうが自治体財政にも有利。

岡ア市長 自分は全国市長会の副会長だが、全国市長会では27年度までは厳しいので、財政措置延長を要望している。高知市は学校施設が多い(220棟)。工期が2〜3カ月はかかるが、夏休み中しか工事できない。高校は授業中でも工事をやっているが、小学生は集中できない。技術者の確保にも制約があり、来年度施工予定が12棟、25年度末に56棟残る。

このうち技術棟が7棟。これは授業をやりくりすればできるが、校舎と体育館が49棟。26年、27年にそれぞれ20数棟を一挙にやらなくてはならない。授業中を工期に含めるとできないことはないが、学校現場に無理と言われている。

四国内の構造設計技術者は、県内で約10人と言われてる。耐震設計の判定は、四国各県のもち回りでやっているらしく、1年間に判定できる件数は決まっているようなので、そこも詰まっている。判定は公共施設だけではないので。施工技術者も減っていて、アンカーを打てる技術者が非常に減っている。県内で工事できる技術者は6人しかいないと聞いている。

高知市だけの工事ではなく、県外の工事と引っ張り合いになるので、施工技術者不足もネックになっている。予算はなんとかしなければいけない。予算を言い訳にするつもりはまったくない。施工することが現実にできればどんどん組んでいく。

1年でも前倒しするよう考えているが、年間20数棟となると、県内業者だけで施工することが難しい状況になる。もう少し(27年度よりも)かかるので、財源措置延長のお願いをしていかなくてはならない。

富田企画官 技術者の不足はネックだとは思うが、実際に短期間で集中的に取り組んだ高知市より規模の小さい自治体に聞くと、事前に十分に業界団体と調整することでなんとかなっている。これを機会にもう一段調整してほしい。判定委員会は全国的に受け付けているところがあるので利用してもらいたい。厳しい面はあるだろうが、高知は特に地震津波に意識が高い。国庫補助率の嵩上げがある中で検討してほしい。

岡ア市長 工期が限られてなければもっと対応の仕方はあるが、授業中の工事はきびしい。開業期間中にやると特に低学年が落ち着かなくなってくる事例もあり、工事は夏休み中に限ってやっている。

体育館は授業中に工事ができないかと学校と協議をすすめているが、まだ整っていない。体育館や技術棟ならなんとかなるが、教室は毎日生活している。子どもの精神状況にも影響を与えるので気を付けなければいけない。

富田企画官 児童生徒の学習環境を考慮せずやっている自治体はない。その中で、技術者を確保して集中的にやっている。設計だけでも早くやるといいのではないか。

岡ア市長 年間20数棟は難しい。市の現場監督も12棟でぎりぎりだ。助っ人というのもあるかもしれないが、(工事件数を)倍増するとなると、なかなか難しい。業者も現場監督もいない。

富田企画官 他の自治体も苦労しているが、足りない場合は嘱託を雇用したり、事監理は外注で対応している。(2012年11月25日 高知民報)