2012年10月21日

内部被曝生き抜く覚悟を 映画監督・鎌仲ひとみ

 
インタビューに答える鎌仲ひとみ監督
福島第一原発事故による放射能汚染と、日本人はこれからどう向き合っていくのかを問いかけるドキュメント映画『内部被曝を生き抜く』を撮影した鎌仲ひとみ監督が10月8日、高知市内でインタビューに応じました。

高知県民へのメッセージを

鎌仲ひとみ監督 自分たちの同じ国内で、人類史上まれに見る放射能汚染が起きているにもかかわらず、日常の中であたかもそれがないかのように思わせられていることを知ってほしい。放射能は減っていく分もあるが、一方で拡散したり濃縮したりして、ものすごくやっかいな事態を引き起こしている。1年や2年で終わるような事態ではないという認識を新たにしてほしい。

生半可ではない苛酷な大惨事だ。被害者にも思いを馳せてほしいし、メディアにはもっとそういう情報を出してほしい。

原発をめぐる様々な情報の捉え方、今後の議論について

鎌仲監督 絶対に正しい答え、100%の間違いがあると思わされ、白か黒かで、原発の是非の議論をやってきた。もっと多様な選択肢の中での現実的な議論が原発に関してできてない。(私たちは)あいまいなグレーゾーンにいて、これからもずっと議論をしながら、方向の選択をやっていかなければならないという覚悟がいる。

情報を読み解くマニュアルがあるわけではない。アンテナを立て、地域の意識のある人達とつながり勉強会をしたり話を聞いたり、自治体と給食のことでコミュニケーションしたり。これまでの「お任せ」部分を引き戻し、自分達で風通しの良い社会を作っていく。それは自分が動かないとできない。壁にぶつからなければ分からない、壁の乗り越え方は。高知には高知の壁があるし、山口には山口の壁がある。

この地域で「子どもを育てて生きるぞ」という若い人達が、原発事故を引きおこしたようなことをさせない、新しい自分達の責任の取り方を実践してほしい。やっぱり女達が頑張らないと。
 
原発をなくしたいと思うが、行動に踏み出せない人もいる

鎌仲監督 まずは選挙に行くことかな。そして自分が投票してきた議員が原発にどういう政策をとってきたのか、これからどうしようとしているのかを知る。まず自分がしてきたことを知らなければ、また同じ事になってしまう。

選挙にいかない、隣の人によろしくと言われて投票していては、民主主義的な選挙にならない。鹿児島県知事選挙は76万人が棄権した。圧倒的な女性と若者が投票しなかった。脱原発は政治的な決断だ。政治的な参加が、自分達にどんな影響があるのかを日本人は知らない。それは報道しないから。

でも自分達で実践していくしかない。議員の事務所に電話して「前回あなたに投票したけれど、原発にはどういう姿勢ですか」と聞くことから始めてほしい。 

次回作は?

鎌仲監督 (チェルノブイリ事故で汚染された)ベラルーシとウクライナと、福島の測定値を対比させようと思っている。事故から26年たったチェルノブイリと2年弱の福島。人はどう暮らしているのか、国はどう言っているのか。分かりやすいと思う。

日本がどういう状況におかれているのかは、(国内からは)分からない。福島とチェルノブイリは放出された放射性物質はほとんど同じ。慢性的に外からも中からも被曝し続ける環境で、どんな被害が想定されるのか。現場の人達の感覚を大事に作ろうと思っている。(2012年10月21日 高知民報)