2012年10月14日

高知市議会 学校耐震決議否決の裏側

 
27年度耐震完了を求める決議は共産党だけの賛成少数で否決された(9月27日)
文部科学大臣名で公立小中学校の耐震化の著しい遅れを指摘する文書が岡ア誠也・高知市長に送付されていたことが明らかになったことを受けて、9月27日の高知市議会では、平成27年度までに学校耐震化を完了させることを求める決議が提案されましたが、日本共産党だけの賛成少数で否決されました。南海トラフ大地震に襲われ、大きな被害が確実視される高知市で、子どもの命を守るために最も緊急度の高い学校耐震化を推進する決議がなぜ否決か。決議否決の裏側をレポートします。

高知市の耐震化率の到達は6割台(全国平均8割台)、かつ過去3年の「伸び率」が全国平均以下、50棟以上残があることから、特別に努力が必要な自治体に該当し、文科省は8月24日に大臣名の文書を送付し、11月には同省職員が岡ア市長と面談して指導することになっています。この問題は、南海地震から市民の命を守ることに正面から立ち向かおうとしない市政の弱点を露呈させました。

同市の小中学校耐震化工事は、およそ年間約10棟のペースで進められているのが現状ですが、昨年の東日本大震災前の完了目標は37年度という超スローペース。震災後に30年度に目標を修正した経緯があり、耐震工事を担当している同市教委・教育政策課からは「現状の体制で、これ以上早めるのは無理」という声が聞こえてきます。

同市の学校耐震化の緩慢さは、市費を100億円以上投入する計画の市役所新庁舎や、旭地域の区画整理事業への機敏さとは対照的。ある県教委幹部は「表向きは言えないが、高知市の耐震の鈍感さには正直いって、いらついている」と不快感を隠しません。

決議つぶし

市議会最終日の9月27日の開会に先立って開かれた各派代表者会の席上、日本共産党の下本文雄団長が文科省から届いた文書を報告。「これほど重要な問題にもかかわらず、執行部から説明がなく、質問でもとりあげることができていない。学校耐震化の優先度を引き上げ、27年度までに完了させることを求める決議を早く上げるべきだ」と提案しました。ところが、他の会派は決議を上げることに強く抵抗します。

「趣旨はいいが職人が足りず工事できない。(庁舎など)他の事業もある。決議ではなく申し入れで」(新風クラブ)、「すぐ決議する必要はない。全会派による申し入れを」(新こうち未来の会)、「岡ア市長は27年度は難しいが、可能な限り対応すると言っており決議は必要ない」(公明党)

このように、共産党以外の与党会派には、耐震化の遅れを深刻に受け止めようとせず、市長に傷をつけまいとする意向、新庁舎や区画整理など巨大事業への影響を回避しようとする立場が見え隠れします。議会として最高の意思表示である議決ではなく「申し入れ」に固執したことから、会派間の合意はならず、共産党が単独で決議を提案。公明党の山根堂宏議員が反対討論に立ち、共産党以外に賛同議員はいませんでした

ペースアップ?

決議は否決されたものの、議論の中で耐震化の遅れを、このまま放置していいのかという認識が市役所内にも拡がりつつあります。

10月1日、「平和と生活を守る高知市民共闘会議」(山本正博代表)との懇談の席で岡ア市長は、学校耐震化推進を求める声に対し、「残りは約80棟なので、年20棟やれば4年ですませることができる」と発言するなど、30年度という目標の更なる前倒しを念頭においたような発言も出るなど、一定の修正がはたらくことも考えられます。南海トラフ地震で甚大な被害を受けることが確実な高知市で、児童生徒の命を守る大前提である学校耐震化が、全国より大きく遅れこむなどということが許されるのでしょうか。市政の根本姿勢が問われています。(2012年10月14日 高知民報)