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9月6日、高知共済会館 |
マイナンバー。NTTのサービスではありません。かつて佐藤内閣が狙った国民総背番号制度=「マイナンバー 社会保障・税番号制度」法案を野田民主党政権は「社会保障と税の一体改革」の中で成立させようと躍起になっており、秋の臨時国会で決まる可能性もある緊迫した状況にあります。9月8日には法案への理解を深めるため、内閣府番号制度創設推進本部(野田佳彦本部長)が主催するシンポジウムが高知市内で開かれましたが、プライバシー侵害の懸念、実務を担わされる市町村の反発が露わになりました。
発言者は内閣官房・向井治紀審議官(財務省出身)、川口弘行・サイバー大学准教授、日本経団連経済基盤本部の井上隆・副本部長、日弁連・森晋介氏、四国税理士会の矢野平八副会長。進行取りまとめ役のコーディネーターを共同通信・植村昌則業務局次長が務めました。
向井審議官はマイナンバーによって「よりきめ細やかな社会保障の実現、行政の効率化が可能になる」として、@任意ではなく強制性がある、A実際の実務は市町村が実施、A住民基本台帳ネットワークではきびしく制限されている情報連携=名寄せが可能に、B制度の詳細、安全対策は未定、C導入時4000億円、ランニングコストとして年間400億円程度が見込まれるなど制度のポイントを説明しました。
■発言内容
発言者の中で制度に明確に反対したのは森弁護士だけ。他は賛成の立場からの発言でしたが、川口准教授は「条件付き賛成。国民が不安に思っている名寄せは任意の選択にすべき」と現行政府案を批判しました。
討議の中では、制度の最大の目的が課税のため所得把握の精度を向上させるものであることが浮き彫りになりました。一方で限界も明らかに。「番号を振ったからといって100%所得を把握できるわけではないが、威嚇効果はある」(向井審議官)などと、外国での不正取引には無力で、意図的に所得を隠す者への効果は期待できないことを政府担当者自らが語りました。
森弁護士は「番号制度は国民が必要性を感じていない。社会保障の問題は番号では解決しない。行政コスト削減もシステム導入・維持の莫大なコストを考えれば期待できない。プライバシーが侵害される被害は起きたら回復ができきず、セキュリティに絶対はない」と制度をきびしく批判しました。
会場からは高知市、南国市などの窓口担当職員から「住基ネットに加えて別の番号が必要か」と制度の必要性に疑問を投げかける意見が出され、「今でも転入出時に住基ネットのコンピューターアクセスの遅れで30分も待たせるなど、住民に不便をかけている。苦情がくるのは市町村の窓口だ」と不満の声が続出しました。
また、「経団連が推進しているのが気になる。導入時には民間利用はさせないと言うが、、やがて生命保険会社に個人の病歴情報が流れるようなことになっていくのではないか」と、大企業が導入を積極的に求めていることへの不安も聞かれました。(2012年9月16 高知民報) |