2012年6月24日

ココラムアンテナ「清流を残す責任」

仁淀川の源流域にあたる愛媛県久万高原町で浮上した産廃処分場計画。松山市に近いが、三坂峠が分水嶺になるために排水はすべて高知県に流れる。愛媛県内で影響を受けるの市町村は久万高原町だけだが、高知県側は仁淀川町、越知町、日高村、いの町、高知市、土佐市が該当するわけで、愛媛県だけで事を決めてもらっては困る。

「仁淀川を守れ」という反対の声の強まりで、計画を一時見合わせるという報道があったが、言い方を変えれば、長期戦でやるということであり、息の長い運動が必要になってくる。

6月7日、久万高原町に行き高野宗城町長、処分場を計画している大宝砕石の経営者と話しをした。予定地は久万高原町の最深部のために、町民の反対は強く、町長も反対を表明しているが、気になったのは、町長が「トップとして賛否を言うことはできない」と繰り返した上で、「町議会や農業関係者が反対なので町としても反対」と発言していたこと。選挙で選ばれた町のトップとして断固反対してほしいところだが、そういう及び腰や不安定さがあるのも事実で、住民世論で支えないと、揺さぶられれば予断を許さない。

大宝砕石の経営者によると、愛媛県は処分場として許可をする前提でアドバイスを業者側にしているということだった。話半分にしても、愛媛県が業者と対峙する姿勢を持っていないのは明らかだ。

大宝砕石の経営者からは、繰り返し、日高村のエコサイクルセンターのことを逆質問された。「高知県が仁淀川近
くに産廃を作っているのだから、うちが作って何が悪いのか」といわんばかりに。

確かに、そこを突かれると痛いのだが、エコサイクルセンター(以下エコ)も、大宝砕石の計画する処分場(以下大宝)も、同じ「管理型」ではあるが、エコ11万、大宝100万立方メートル。大宝は途方もない巨大さである。

さらにエコは埋立地に雨水が侵入しないよう屋根で覆い、管理型よりも高いレベルの遮蔽型に近い施設になっている。大宝に屋根はなく(管理型の必須条件ではない)、雨が降る度に埋立地は巨大な汚水プールになる。

その汚水をポンプで汲み上げ、貯水池に貯めて浄化し、採石で石を洗うために使うので「汚水は流さない」と大宝はいうが、集中豪雨時に汲み上げや処理が間に合うのか、汚水プールの底は厚さ数ミリのゴムシートでしかなく、将来にわたってしみ出すことがないのかという重大な懸念材料がある。

大宝に「エコには屋根がある。屋根は付けないのか」と聞くと、「そんな費用がかかることはとてもできない」という返事だった。

源流域に産廃を許せば、半永久的な将来にわたり、ゴムシートが破れ汚水が垂れ流されるリスクを下流住民は負わされる。さらには経営が不安定になりがちな民間企業の運営だと、引き取り手のない危険な廃棄物を受け入れる動機が働くことも怖い。

汚水プール底のゴムシートが裂け、汚水が染み出しはじめたら、もう止めることはできない。次世代に清流を残すのは我々世代の責任。下流域の関係住民として産廃を拒否する声をもっと届けなければならぬ。(中田宏)(2012年6月24日 高知民報)