2012年6月10日

コラムアンテナ 歪みの構図にメスは入るか

5月30日付の「高知新聞」に岡ア誠也・高知市長が、昨年の市長選時に高知市労働事業協会から選挙カーや音響機器を借り受け、「寄付」されたことを問題視した記事が社会面に載った。

記事の主題とされた「記載ミス」は、些末なことではあるが、重大なのは、岡ア市長が高知市労働事業協会と一体化し、丸抱えで選挙をやっている実態を明らかにした記事が掲載されたこと。この意味は小さくない。

高知市労働事業協会とは何か。高新の記事では「随意契約で市の仕事を請けている団体」としか書かれていないので、大方の人は何のことか分からないだろう。

高知市労働事業協会の所在地は、部落解放同盟高知市連絡協議会と同じ。数年前まで同市協の文字通りの最高実力者・森田益子氏が理事長を務めていた。つまり両者は表裏一体、部落解放同盟高知市協の事業部門が協会と理解していい。

協会は社団法人の認可を得て、高知市が発注する清掃業務などをこれまで随意契約で、最近は入札で請負い、さらには介護保険事業「やさしいグループ」など、手広く事業を展開している。

2006年、情報開示義務を負う公益法人としての協会を取材するために事務所を訪問する機会があったが、「ここは解同の事務所ぞ。何しに来た」と凄まれ追い返された記憶がある。それほどに両者は一体であった。

心ある高知市職員、教員、市民本位の市政を考える人達は、解同市協に筋が通せない高知市政の歪みを正す必要性を一様に痛感しているはずだ。

歪みの実態を簡単に振り返ってみる。

2005年 人権侵害救済法制定を要求する東京での示威行動に高知市部課長が公費で出張し参加。税金を使って解放同盟の大衆行動に幹部を派遣。

2009年 30年前の消防局内の問題が「差別事件」とされ、岡ア市長以下165人の部課長が勤務時間中に集められ糾弾される。

2010年 まったくの無知からくる若い職員の発言に過剰反応して、森田益子氏と竹内千賀子市議(解同市協議長)を講師に健康福祉部の職員250人が勤務中に「研修」させられる。

2012年 高知市が発行した市史に記載されなかった古地図をめぐり、吉岡章副市長ら6人の市幹部が、解同市協事務所に呼ばれ90人に囲まれ「確認学習会」。「人権意識が不十分だった」と言わされる。

この類の話は枚挙にいとまがない。このような旧態依然とした主体性を欠く対応は高知市では、現在進行形なのである。「闇融資」事件以降、橋本大二郎前知事の下、筋を通した対応に転換した県とは対象的である。

さらに高知市は、旧同和地区内にある市営住宅の公募情報を、全市民に明らかにせず、旧地区内限定だけにしか知らせないという、恐ろしく「差別的」な事までやっている。このようなことがまかり通る背景には岡ア市長の選挙を解同市協=高知市労働事業協会が丸抱えで面倒を見ている特別な関係がある。

この問題を長く追ってきた者として、今回の高新の記事は、解放同盟や同和行政にまで掘り下げていない及び腰に物足りなさはあるが、それでも感慨深く受け止めた。

これまで同紙は、同和問題、解放同盟の関係となれば、いつもステレオタイプな深みのない提灯記事ばかり。常軌を逸した高知市の対応を、百も承知の上で黙殺し、無批判だった。このような高新の報道姿勢が高知市政と解同市協の歪んだ関係を作ってきたともいえる。

今回の記事がエポックとなりタブーが破られていくのか、それともこれきりか。注目したい。(N)(2012年6月10日 高知民報)