尾ア正直知事は5月10日に記者会見を開き、政府が3月31日に公表した津波高予測データを使って高知県内の地域ごとに浸水域・浸水深データを公表し、避難対策の見直しを市町村と共に迅速に進める姿勢を強く打ち出しました。
尾ア知事は「県民にひろがる不安、無力感を払拭し、現段階で推定できる最悪レベルの浸水域、浸水深を公表した。次の地震が必ずこうなるものではないが、県民の命を、この規模で守る取り組みをすすめる。大きな津波が注目されているが、小さい津波を軽視せず、逃げる対策を徹底する」と強調。
避難の選択肢を増やすために、高台移転、避難場所見直し、避難ビルやタワー、シェルター、現位置高層化などの検討を早急にすすめ、現行制度を改善させ、後押しする制度を国に政策提言していくとしました。
今回公表されたデータによると、東洋町から宿毛市まで海岸部は軒並み5メートルから15メートルの津波が押し寄せ、黒潮町白浜地区や土佐清水市松尾地区では30メートルを超える地点も。
東洋町(9・5メートル)、田野町(6・5メートル)、高知市(1・5メートル)、中土佐町(13メートル)、黒潮町(10・5メートル)など震災後の救援活動の拠点となる役場庁舎や、高知空港全域が水没して機能の麻痺が懸念されます。救急救命を担う高度医療機関、消防防災・県警ヘリコプターの格納庫も浸水の影響を受けることから対策が急がれます。
県は今回公表した情報に、秋に国が示す予定のデータを重ねて修正し、津波到達時間、構造物の影響を加味した、より精緻な第2弾の浸水予測を公表する予定です。
解説 今回の県の発表は、内閣府が3月末に公表した東海・東南海・南海地震が連動した場合の最大級の津波と震度の新たな想定のデータを使い、具体的に高知県の各地域での影響を、国の公表を待たず、全国に先駆けて公表したもの。
国の発表は市町村名までで具体性に欠け、全国最大34・4メートルの巨大津波が押し寄せるとされた黒潮町をはじめ、県下の自治体から「これでは対策の打ちようがない」という声が噴出し、県民に不安とともに無力感がひろがる状況があったために、国待ちにならず、高知県として独自の公表に踏み切りました。「正しい情報を県民に示し、一刻も早く対策をすすめる」(尾ア知事)ことは、県民の生命財産を守る自治体として評価される判断であるといえます。(2012年5月20日 高知民報) |