高知県議会の自民党・公明党の一部議員が、橋本大二郎前知事時代(2004年)に作られた県こども条例の廃止を声高に求めた問題を受けた議論が、5月8日の県議会文化厚生委員会でありましたが、強硬な廃止論は影を潜め、条例の存在意義を評価し「より補強する議論を時間をかけてしていきたい」(梶原大介・自民議員)という方向性で一致。執行部が議論の行方をみて予算執行時期を判断するとしていた条例関連シンポジウムの準備に直ちに入ることになり、同条例をめぐる混乱は一定終結しました。
問題の発端は3月13日の同委員会。公明党の西森雅和議員を先頭に、自民党の森田英二、中西哲、西森潮三議員らが「自由闊達にという条例と、教育は,矛盾する」、「橋本知事が目立つことに飛びついた」、「条例は学力の伸長を阻害する」、「手放しな子ども礼賛に疑問がある」、「権利だけを主張している印象がある」など、日本政府が批准している国際条約である「子どもの権利条約」の趣旨を理解しない時代錯誤な難癖が飛び交い、同条例の関連予算は議会を通過しているものの、自民・公明会派との摩擦を避けたい執行部が、4月から委員が入れ替わる新しい文化厚生委員会の議論を待ち、予算執行の時期を判断するとした経過がありました。
3月28日には尾ア正直知事が記者会見で、同条例の意義を評価し、「教育と矛盾することはない」と明言したこともあって、新しい文厚委の自民党議員(公明党委員はいない)の姿勢もトーンダウンし、5月8日の委員会に至りました。
自民党内には条例廃止を求める強行派とともに、知事との摩擦を避けたい穏健派、あまりに時代錯誤的な議論に抵抗がある若手もおり、強行派が多数にはなりませんでした。「橋本時代のことはもう関係ない。子どもの状況がこれほど厳しい状況の中で、子どもを守るために何が必要かという議論をしていくべきだ」(若手自民党議員)。
ただし、自民党が求める「補強」が、親の子育てを「自己責任」で追い込むものであることも予想され、同条例の議論は予断を許しません。この問題が、ここまでこじれた背景には、針小棒大にあおった地元紙報道がありました。一方で地元紙は前出の知事記者会見について全く報じない意図的な操作も。報道機関としての自己分析も必要です。(2012年5月20日 高知民報) |