2012年4月15日

県 広域がれき受け入れ国に再質問 処理必要性、二重安全基準に疑義 実質受け入れは否定

国は岩手・宮城両県で震災瓦礫の処理が進まないことが復興の妨げになっているとして、全国の自治体に瓦礫400万トンの広域処理を要請。高知県は回答期日とされた4月6日に尾ア正直知事名で細野豪志・環境大臣に回答を提出しました。県の回答内容は、協力の可否の前提として400万トンの広域処理の必要性に疑義を唱え瓦礫処理の全体像の提示を迫り、焼却灰の処理基準の矛盾点について説明を求めるもので、直接的には可否を明らかにしていませんが、実質的に国の協力要請に応じない姿勢を示すものになっています。

県の回答のポイント

@県も市町村も被災地の復興に協力したいが、未だ検討段階で最終判断に至っていない市町村・一部事務組合が多い。

Aその背景には、処理の安全性が県民に理解されていないこと、風評被害の懸念、大半の施設の処理能力の不足、焼却灰・飛灰の多くを県外処理している県特有の事情がある。協力の可否の前提として、以下の確認が必要だ。

B瓦礫全体の処理計画、現有・今後増設する焼却炉の処理能力と本当に必要な広域処理の量の提示。

C原子力発電所内であれば、キログラムあたり100ベクレル以上の廃棄物は厳格に扱われるのに、今回の災害処理では焼却灰が8000ベクレル以下であれば通常廃棄物と同じ扱いになる安全基準のダブルスタンダードについての合理的な説明を求める。

D焼却灰の処理を県外で行う場合には、国が他県との調整するべきだ。

県がこのような判断をするに至る背景には、環境省担当者を招いた説明会(3月28日)で、環境省側から納得の得られる説明がないいことがあります。

岩手県・宮城県の処理が必要な瓦礫の総量は約2200万トン。広域処理が必要とされる400万トンの処理の遅れが復興の遅れの主要な要因であるかのような国の言い分は見当違いであり、地元での処理を拡大して地域の雇用と復興につなげたい被災地の要望にも反することから、処理計画の全体像を明らかにすることが重要になりますが、環境省は「処理の全体計画はまだ示せない」と言うだけで、県や市町村を納得させる回答はありませんでした。

焼却灰の安全基準についても、8000ベクレル以下であれば一般廃棄物と同じ扱いをしても周辺住民の被曝線量は0・01ミリシーベルト以下であるから問題ないと繰り返すだけでした。

解説 県の回答は、遠くない時期に南海地震で被災県となることが予想される高知県として、頭から反対するのではなく、国に再質問をしてボールを投げ返し、協力の可否については引き続き市町村と協議し検討していくというものですが、国の説明の骨格部分である400万万トンの広域処理の必要性、焼却灰が8000ベクレル以下であれば一般廃棄物と同様に処理しても安全性に問題がないとする言い分を真っ向から否定するもので、実質的には受け入れできないという意思表示になります。県のこのような姿勢は被災地の現状からも、放射能による汚染を拡散させず高知県民の生活と産業を守って行く上でも適切な判断といえます。(N)(2012年4月15日 高知民報)