2012年4月1日

コラムアンテナ 空虚な財務大臣の言葉

 
講演する河野太郎衆院議員(三翠園ホテル)
「税収はすべて社会保障に還元する」、「老いてますます安心な社会を作る」−−。「社会保障と税の一体改革」について国民と意見を交わす「『明日の安心』対話集会in高知」(政府主催)が3月24日、高知市内で開かれ、安住淳・財務大臣が「社会保障の安定化のために」消費税増税の必要性を説く一方で、参加者からは増税への不安、懸念が相次いだ。

安住大臣は65歳以上の高齢者を支える若い世代が50年前は9人(胴上げ)、現在は3人(騎馬戦)、40年後は1人(肩車)になると強調し、税収が落ちる中で、増え続ける社会保障費を賄うため赤字国債を発行する現状を打開するには10%の消費税が必要だと求めた。

安住大臣は宮城県石巻市出身で、実直そうな柔らかい語り口に引き込まれ、何となく「それもそうかな」と思わされそうになるが、よく聞くと、言うことにおかしな点がいくつもあった。
 
逆進性

安住大臣は、税収と歳出(増え続ける社会保障費)のギャップを埋めるために、消費税増税が避けられないと言うが、所得再配分のためにある社会保障を低所得者に負担が重い消費税で賄おうという考え方が、まずはおかしい。

大臣も逆進性の問題は認め、消費税導入と5%への引き上げ時に、高齢者に対し1万円程度の現金を臨時的に給付した事例を参考にして、簡易対策を考えると述べた。しかし、生活必需品にすべて課税される消費税率が10%に跳ね上がれば、この程度で逆進性の問題が緩和されるはずがない。

そもそも、低所得者の基準も定まっていなければ、予算規模も給付額も「何も決まっていない」(集会終了後の会見)状態。もしやるとしたら、所得把握のための事務費は無駄でしかないし、せっかくの増税を多くを払い戻すマッチポンプなら始めからそんな税金はかけないほうがよいという理屈になるので、「低所得者」はかなり限定的にされることは分かりきっている。

法人税減税
 
支え手を増やすには、子どもが増えなければならず、若者の安定雇用が決定的であるということは、安住大臣もそのように言うのだが、そこから先がおかしい。ずれている。

「消費税を増税しても法人税減税の穴埋めに使われるだけ」という会場の指摘に対し、大臣は「日本企業に国内で頑張ってもらい、雇用を吸収してもらうためには法人税減税が大事であり、大企業がよくなれば下請中小零細も潤う」という、使い古された「トリクルダウン論」を展開した。

法人税減税の恩恵をこうむる大企業は、すでに多くが多国籍企業と化している事実にも触れず、外国に「逃げる」最大の理由である円高と国内の購買力低下=市場としての魅力のなさのために、歯止めなく空洞化している実態とはまったく噛み合わない。法人税を少々下げたところで歯止めになどならないことは自明の理であるにもかかわらず。

消費税増税により国内の購買力がさらに落込むことで、ますます空洞化が進む。所得税も法人税収も減り、若者の雇用も消えていくという悪循環のほうがはるかにリアリティがある。

安住大臣は、根本的な問題解決のためには「高知県の人口が100万人になるような状況が必要だ」と無責任に言い放った。TPPをすすめて中山間を壊し、人が住めないようにしようとしている内閣の閣僚が、どの顔でそんなことが言えるのか。語り口は実直だが、何とも空虚で無責任な財務大臣の言葉だった。(N)(2012年4月1日 高知民報)