2012年3月18日

コラムアンテナ 県アンテナ店 県費負担じわり増加

 
高知県アンテナショップ「まるごと高知」
高知県地産外商公社が運営する県アンテナショップ「まるごと高知」(2010年8月オープン)が2011年度の活動実績と収支を3月7日、高知県議会企画建設委員会に報告した。テストマーケティング、メディアへの露出と外商活動拠点、空前のショウガブーム、レストランの健闘などがありながらも、開店にあたり県が県民に提示した「収益」目標には大きく届かないことが明かになった。

11年度の売り上げは約3億8000万円で、収益は目標3700万円のところ1300万円だった。(県が公社に派遣した職員の時間外手当が、県負担から公社負担に制度変更されたため、実質2000万円程度に相当すると県は説明)

収益が見込みより下回ったことは、単に「努力不足」ではすまない責任を県は負っている。このショップは公社の自前運営ではない。開店にあたって初期投資である店内改装費約1億7000万円、家賃年7800万円(5年分、3億9000万円、1日約20万円)などを県費で支払い、店が上げる「収益」で家賃の一部を返却して穴埋めする計画を前提に関連予算は認められている。

収益が計画通りに上がらないのは、県費負担増とイコールであり、県は今後3年間の収益目標を下方修正したが、少なくとも数千万円単位で県費負担が増えることになる。

県担当者は「2月以降、生姜ブームで開店直後に匹敵する人出。震災がなければ年間4億円の売り上げ目標は達成できた」と好調ぶりを強調し、ショップがあるが故に首都圏メディアに取り上げられる機会が増大するなどの波及効果があるとも述べていた。果たしている役割はその通りだろう。

だからと言って県自らが県民に提示した家賃返却の目標が、「見込み違い」だけで簡単に反故にされ、数千万円もの県費負担を増していいということにはならない。

収益が思うように上がらないのは、来客数の少なさとかさむ人件費が要因である。来客目標は年間100万人であったが、実績は70万人に止まった。集客の弱さは場所の悪さに尽きる。店の住所は「銀座」だが、一般にイメージされる銀座とはかなり離れているし、ビルの構造が奥まっていてとにかく目立たない。

人件費は当初年間5400万円の計画が、やってみたら1億円かかったと報告された。 アンテナショップであるからには商品をただ売るだけでなく、説明や接客をしなければならないので人員を増す必要があったとのこと。地下、1階、2階と3フロアに分かれ、それぞれ内階段がない構造により、実質3店舗を運営するに等しい経費の増が避けられないという弱みもあったろう。だがそれらは計画段階で当然織り込んでおくべき話で、やってみたら人件費が倍でしたでは、ずさんな計画と言われてもしかたがない。

公社の現地スタッフは懸命に奮闘していることだろうと思うが、この間の活動からは店が「銀座」でなければならない理由は見えてこない。NHK「龍馬伝」放映に間に合わせる(実際には間に合わなかったが)ために駆け込んだツケ、「銀座」へのこだわりが尾を引いているように今さらながら思えてならない。

いずれにしても、このショップはあと3年はこの場所で営業し、費用対効果の評価が下されることになる。県は県民への約束を今一度重く受け止めて、県産品PRに店を活用しながらも、県費負担を減少させ当初計画に接近させるための努力を尽くしてほしい。(N)(2012年3月18日)