2012年3月4日

隣保館調査に苦慮 県下自治体 同和地区線引きに抵抗感

2月末を期日に全国的に取り組まれている「今後隣保館が取り組むべき地域福祉課題を明らかにする実態調査」(社会福祉法人・大阪府総合福祉協会が厚労省の委託を請け、全国隣保館連絡協議会(全隣協)に再委託)への対応に県下の自治体が苦慮しています。

調査は「地域住民」=かつての同和地区の線引き・「周辺地域」=小学校区・市町村全体を、年齢構成、人口動態、世帯の状況、収入、生活保護、障害者の状況、介護保険、乳幼児検診、教育、住宅の状況など事細かに調べて比較するもの。

項目が多岐に渡り、行政が把握できていない情報も多くあることから「今、持っている情報しか出せない。この調査のために新たに調べることはしないので、空白で出すところも出てくる」(高知市)。

同和地区の線引きを根拠付ける法が失効して10年が経過している現在、改めて同和地区に線引きしてデータを集めることへの抵抗感を持つ自治体も多く、県が尾ア正直知事名で「今回の調査の一部が地域を特定しているため、県の方針に基づき文書等による要請は行わない」とする状況もあって、「回答するかどうか最後まで悩んだが、市長の判断で出すことになった(県東部の市)」という声も聞かれました。

このように各自治体が悩みながらも調査に応じるのは、隣保館運営に国の補助金がついており、財政難の中で少しでも財源を確保したいという思いが背景にあります。

隣保館運営補助金(年間)は香美市で1000万円弱(1館)、高知市で(13館、約7000万円)など、自治体にとって無視できない財源。国はこの補助金を廃止して一括交付金化する動きを見せており、自治体にすれば、隣保館存続=補助金継続につながる調査には協力せざるえないというのが実態です。

部落解放同盟は部落の低位性を明らかにして補助金継続に役立てようと調査を強く求めてきた経緯がありますが、この調査は部落関係者=属人をカウントはせず、住所だけで面的に対象を把握する=属地であるため、市街地にある旧同和地区では圧倒的多数が地区外から若い世代宇が転入するなど混住が大幅にすすんでおり、「過疎地を含まない分、意外と指標が高い可能性もある(県東部の市の隣保館関係者)」という指摘も。解放同盟が狙う「部落の低位性」を証明するものにはならない可能性もあります。(2012年3月4日 高知民報)