2012年2月26日

コラムアンテナ 破壊の先に何があるのか

大阪「維新の会」衆院選向け公約である「船中八策」について、尾ア正直・高知県知事が2月15日の記者会見で「考え方が違うとこもあるが」としながらも、「共感するところも多い」と、シンパシーを持って受け止めていたことには驚いた。

この種のホットな政治的話題については、慎重な発言をしてきた尾ア知事には珍しく「共感」、「考えは同じ」などの言葉を多用した。

尾ア知事は、南海地震から県民の命を守る対策に全力をあげ、産業振興による雇用創出、TPPに反対し中山間地の暮らしを守るスタンスを鮮明にして、その先頭に立ってきた彼自身の実践と、「維新の会」の目指すものが相容れるとはとても思えない。

「船中八策」の基本理念は、「地域が自己決定、自己責任、自己負担で自立する」ことである。

地方交付税廃止、大都市制度改革、首相公選制導入、参院廃止、改憲に必要な衆参両院の同意を3分の2から2分の1への引き下げ、国会議員定数削減、TPP参加など、地方切り捨てと自己責任に直結する新自由主義への路線回帰を「決定できる民主主義」=強いリーダーシップで突っ走ろうというもので、尾ア知事が昨年11月の知事選で掲げた「絆のネットワーク」とはいわば対極にある。

尾ア知事にすれば、展望が見えない高知県の将来と、懸命に進言したが叶わなかった「あったかふれあいセンター」の国としての事業化など、地域の声が届かない硬直した国のあり方を破壊的に変えることにより活路を見出そうとしているのかもしれない。

高知県と日本の閉塞した状況の根源を、根本的な政治のあり方からとらえるのではなく、単なる統治の問題としてしか見ていないことからくる限界ともいえる。

だが、破壊の先に何があるのか。決して尾ア知事が目指す方向には向かわないであろうことは、「船中八策」が高知県あげて闘っているTPPを推進していることからも容易に想像がつく。

今、多くの有権者が二大政党による政治に絶望し、その内容がどうであれ「変える」という強烈なメッセージを発信し、「勝ち組」である公務員を敵に見立てバッシングする橋下氏に絶大な支持を寄せている現実を前に、政治家で
ある尾ア知事がその人気に多少あやかりたいと思っても不思議はないかもしれない。あるいは高知県にとって現実的なものとしてはとらえず、対岸の「打ち上げ花火」のように軽く見ているのかもしれない。

だが、絆を破壊するバッシングと新自由主義回帰が、明日にも大災害で多くの命が失われるであろう高知県にとって、あるいは過疎地の県民の暮らし、連日連夜献身的に働く県職員の心情に何をもたらすのか。高知県庁と県政トップとして、もう少し思慮のある発言がほしかった。今一度よく考えてもらいたい。(N)(2012年2月26日 高知民報)