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「地方の実状分かっているのか」 質疑に立つ越知町の職員 |
2月7日、政府による県市町村、各団体職員向け「TPPに関する説明会」が高知市中央公民館で開かれ、150人が参加。説明会では政府関係者が、TPP交渉の協議の現状について肝心な部分の大半は「明らかでない。交渉次第」とぼかす一方、「高いレベル(95%以上)の関税撤廃をめざす」という現政権の方針を説明しましたが、参加者から「高知県の実状を分かっているのか」という厳しい声が相次ぎました。
説明会冒頭、尾ア正直県知事の「農業分野は関税撤廃により壊滅的な打撃を受けることが危惧され、農村社会の崩壊にも繋がりかねない。地方の疑問や心配を政府関係者に肌身で感じてもらう良い機会だ」というあいさつを恩田馨・県総務部長が代読。
中川周・内閣官房内閣総務官室企画官が90分にわたって説明に立ち、「高いレベル」=95%以上の関税を撤廃し、「稼げる分野」で外国の市場を取り込んでいくことが政府の大きな方向であること、今後は関税で輸入を止める「国境措置」ではなく、国内措置で農家所得を守ること、TPPはゴールではなく完全に自由化された貿易圏への道筋のひとつであることなどが強調されました。
質疑応答では「TPPで農水省は食料自給率が13%になると試算している。国が掲げる食料自給率50%目標と矛盾する」、「工業だけが発展すればよいのか。工業も農業も発展していくべきだ」、「高知県の大半は所得保障からもれてしまう。国は高知県の実状を分かっているのか」などという指摘がありました。
政府にの説明会が全国最初の開催になったことについて県政策企画課は「政府側から職員を派遣して説明する用意があるというう打診が全国にあり高知県としても応募した。応募は20県ほどあったようだが、全国初になったのは単に日程の関係」としています。
解説 政府説明では具体的影響について「明らかでない」といいながら、「対象となる可能性は否定できない」(混合診療)、「議論にはなっているが首相は世界に誇る医療を守ると言っている」(薬価)、「地方がさらなる約束を求められる可能性はある」(政府調達)、「10年以内にすべての関税を撤廃するのが原則」など、これまで日本が守ってきた分野に重大な影響があることは否定せず、TPPの極めて重大な本質が浮き彫りにされました。
同時に尾ア知事があいさつで政府への懸念を明言し、質疑でも批判が相次ぐなど、県民あげてTPPに反対する姿勢を政府に示す場になりました。
尾ア正直高知県知事のあいさつ
TPP交渉については、関税の原則撤廃にとどまらず、政府調達や貿易のルール整備といった非関税障壁も含め21分野にも及び、農林水産業をはじめ建設業、保険、医療福祉金融など多くの分野において県民生活へ多大な影響を与えることが心配されているが、政府においては、昨年11月の野田首相による交渉参加にむけて関係国との協議に入るとの表明後、先月17日のベトナムを皮切りに、関係各国との事前協議を行っていると聞いている。
本県の基幹産業でもある農業分野においては関税撤廃により壊滅的な打撃を受けることが危惧されているが、中でも我が国の農業生産高の約4割を占める中山間地域では急傾斜地などが多いことから規模拡大のみによる生産性の向上には限界があり現状のままで諸外国との競争に晒された場合、農村社会の崩壊にも繋がりかねない。
現在行われている政府と各国との事前協議の中で得た情報については随時、政府から情報提供してもらえると考えているが、事前協議の内容は日本の交渉参加を判断する重要なポイントとなり、県としても協議内容について、これまで以上に注視し、県民の生活を守るために官民一体となって地方から積極的に声を上げていく必要があると考えている。
このためにはTPP交渉の現状や課題を正確に把握することがまずは必要となるので、政府関係者と意見交換することができる当説明会を開催することは非常に有意義なものであり、TPPに対する地方の疑問や心配の声を政府の関係者の方にも肌身で感じて頂く良い機会になると考える。県では先月東京事務所をはじめ、農林水産、健康福祉、商工労働などの関係部局で構成するTPP対策プロジェクトチームを設置し、情報収集や県民生活への影響の把握に努めているが、今後ともこの問題に対し、積極的かつ一所懸命に取り組んでいく。(2012年2月19日)
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