2012年2月12日

大丈夫?中学武道必修化 競技専門家交えシンポ

 集会では柔道、相撲の専門家から率直な意見が出された
4月から中学校体育で武道(柔道、剣道、相撲)が義務化されることに、学校現場の実態との乖離や指導者不足、事故への不安が根強くあることから、競技専門家や現場教員、保護者などが意見を交換する「武道必修化を考える県民集会」(子どもと教育を守る県連絡会主催)が2月5日、高知県立大学永国寺学舎で開かれ、拙速な導入への懸念とともに、中学生の実態に即して「換骨奪胎」しようとする現場の努力などが明らかにされました。

文部科学省は「礼に代表される伝統的な考え方を理解」させるため、柔道・剣道・相撲のいずれかを男女とも中学1、2年生全員が受けるよう学習指導要領を改訂。4月から全面実施されます。

発言者は前田敏男・県柔道協会事務局長(高知商高教諭)、西尾光由・県相撲連盟役員(高知工高教諭)、北村敏明・高知市立潮江中学校保健体育教諭、高知市立横浜中学校保護者の大西朋枝さん。県教育委員会は直前に参加をキャンセル、剣道関係団体からの参加はありませんでした。

意見交換では「柔道は奥が深く、高い教育力があるが、礼は柔道の一部でありすべてではない。相手と組み投げられて分かってくるものだが、年10時間では意味は分からない。受け身を少しやる程度ならやってほしくない」(前田教諭)、

「競技人口が増えるきっかけになるのではと期待している。10時間では相手のバランスを崩す遊び的なものを取り入れたものになる。相撲の経験がない教員も多く、指導に不安があるようだが、講習をした後は思ったより簡単で教えやすいという声が出る。女子がやることに、初めは抵抗があるかもしれないが支障はない」(西尾教諭)という声が専門家から出されました。

一方で、相撲を選択した現場からは「(必修化の)話を聞き、まず設備がないことが困ったが、互いの体に触れあい力比べをするのは楽しく、今の子どもに必要ではないかと考えた。相撲ならば遊びの延長で、円を描いた押しくらまんじゅう、片足でケンケンしての押し合いなど、安全を保ちながら授業の展開がしやすい。ゲームとして安全に楽しむことを考えている」(北村教諭)

保護者からは「どうして武道なのかよく分からない。楽しいという子もいるが、嫌がる子もいる。もっと子どもの声を聞いてほしい。指導者が初心者ではやはり心配だ。楽しむのはよいと思うが、それならどうして武道なのか。多くの親がこの問題を知らないし、まだまだ準備ができていない、4月からの開始は延期すべき」(大西さん)などという声が出されました。

会場からも活発な意見があり、「競技スポーツと一緒にしていいのか。急ごしらえでやることに無理がある」、「やるなら予算をかけきちんとやるべき。高知県は学校で怪我をする子どもが多く心配している」、「礼は体育の課題か。教育全体の課題ではないか」など、保護者への周知もほとんどされていないままの4月からの導入に批判的な意見が相次ぎました。
 
集会を準備した畑山和則・県教組書記長の話 専門家の発言を聞き、高度なことを求める指導要領との乖離が浮き彫りになった。4月から必修化が始まるが、現場の様子を聞きながら、指導要領を変えさせる声をあげていく。(2012年2月12日高知民報)

高知市立中1年生の選択状況(高知市教委調べ)
 学校名 男子  女子 
 城北  相撲 剣道 
 城西  剣道 剣道 
 愛宕  相撲 相撲 
 城東  剣道 剣道 
  潮江  相撲 相撲 
  一宮  相撲 相撲 
  青柳  相撲 相撲 
  朝倉  剣道 剣道 
 行川  剣道 剣道 
  三里  相撲 柔道 
  南海  相撲 相撲 
  西部  剣道 剣道 
  介良  剣道 剣道 
  大津  相撲 相撲 
 相撲 相撲 
  横浜  相撲 相撲 
 柔道 柔道 
 土佐山  柔道 柔道