高知県下の高校生でつくる軽音楽部による合同コンサート「軽音祭」が1月6日、高知市かるぽーと大ホールで開かれた。主催は県高等学校軽音楽連盟(会長は松原和廣高知市教育長、以下軽音連)。出場したのは大方、丸の内、高知農業、追手前、春野、小津、高専、土佐、土佐塾、土佐女子、中央の各高校から22バンド。一昨年12月に城西公園野外ステージの寒空の下、細々とコンサートを開いていたことを思えば、県下のクラブを束ねる組織を結成し、ホールを借り発表の場を持てたことは大きな前進だが、この軽音連が県下の高校関係者に波紋を投げかけていることをご存じだろうか。
軽音連は、高校生の文化系クラブを統括する公認団体である県高等学校文化連盟(横川剛史・県立春野高校校長、以下高文連)に加入を申し入れている。
しかしながら、高文連サイドの議論を聞いていると、あからさまに拒否はしないものの、冷淡というか、あまり乗り気でないことが伝わってくる。
今のところ高文連としては平成23年と24年度の軽音連の活動を見たうえで、「最短で25年度から加入が認められることになるのではないか」(県教委関係者車)ということになっている。
だが、1月6日に開かれた県立高校・特別支援学校学校校長会で、この問題が議論になった時、ある高校の校長が「安易に軽音楽部を認めると、吹奏楽部が食われて共倒れになることが懸念される。騒音に住民から苦情もくる。うちの学校では生徒から求めがあっても軽音楽部は作らせない」と語気を強め警戒感をあらわにする場面もあった。
そもそも、軽音連会長を県立高校校長ではなく、高知市の中学校教員出身で高知市教育長の松原氏が務めなければならない現状に、軽音部への冷ややかな視線があらわれている。なぜ高校は軽音楽部に冷たいのだろうか。
県教委関係者に聞くと、「どの高校も生徒数が減る中で、新たなクラブを認めると共倒れになるという懸念が現場にはある」という答えが返ってくる。その心配は理解できる部分もあるが、クラブ活動は一体誰のためのものなのかということを考えれば、おのずと答えは出るはず。
実際には、本音のところで「バンドは不良がやるもの」というような古くさいネガティブなイメージが影響していることが見てとれる。「確かにそういう感覚はまだ残っているかもしれない」(県教委幹部)。
軽音連の松原会長は、「不登校の生徒の自己実現の場になっている事例もあるし、地域のイベントで住民が知っている曲を演奏するなど、ずいぶん昔のイメージとは違ってきている。県下の軽音楽部で約500人の生徒が活動しているが、全県的な組織がなく発表の場が少なかった。この生徒たちの発表の場を作りたい」と意気込む。
まさか今時、本気で「バンドをやると不良になる」などと考える高校教師がいるとは思えないし、仮に多少そういうような傾向があったとして、それを正しい方向に持っていくのが教育であり、排除の理由にする教育者は高知県にはいないはずだ。
すでに管理職の大半は、自身が高校生の時にはロックを聴いて育った世代だろう。もう少し柔軟に、なるべく高文連への早く加入が叶うよう、関係者の努力を求めたいと思う。(N)(2012年1月22日 高知民報) |