2012年9月9日

高知市が生活保護業務を一部民間委託 金銭管理 プライバシー保護に課題も

 
金銭管理業務窓口が置かれる民間ビル
生活保護受給者に支給される保護費を、一度に渡すのではなく小出しにするなど適切に管理して浪費を防ぐ「金銭管理」業務を高知市が9月1日から民間団体へ委託しました。これまでは市職員のケースワーカー(CW)が福祉事務所内の金庫に現金を保管し、金銭管理業務を担っていましたが、CW不足の中での業務軽減、市のルールから外れる異例な現金管理の改善が狙い。ただ全国的に、事例が少なく、生活保護業務の下請化による受給者のプライバシー保護の不安、CWとの接点が少なくなることでの受給者の実態把握の弱まりを懸念する声もあります。

金銭管理業務は、NPO法人格を持つワーカーズコープ(東京都中野区で同種の業務の実績がある)が月額67万円の経費で受託。1人の正職員(男性)と2人の臨時職員(女性)を雇用し、高知市役所に隣接する民間ビルのフロアに月曜から金曜まで、8時半から17時15分まで窓口を開設。

市のCWの指示による個別の支給方法(たとえば毎日500円、週5000円など)により、訪ねてくる受給者に現金を渡す業務です(今年度は約50人の管理を想定)。

同市福祉管理課では「現金取り扱いをルール通りにするためのもので下請けではない。CWの増員も難しく本来業務に集中するためにも必要だ。委託するのは現金を渡す部分だけで、使途はCWが面談して把握する。暴れるなどして扱いが難しいケースについては市の非常勤特別職が対応する」としています。

高知うろこの会の塩冶一彦さんは「確かにCWの業務軽減は必要だが、金銭の管理は金だけのことではなく生活すべてにつながっている。これを民間に任せていくというのでは、さらなる下請け化につながるのではないかと心配だ」と話しました。

また受託業者は受給者と窓口で面談することになるため、否応なく受給者のプライバシーを知りうることになりますが、将来にわたる守秘義務が、3年ごとに委託先が変更される可能性がある外部委託で担保されるのかという問題があり、委託するにしても社会福祉協議会など、公的な性格を持つ団体にすべきではないかという指摘もあります。

市福祉課関係者が「団体側との信頼関係がないと、できない制度であることは間違いない」と漏らすように、計画の枠組みの脆弱さは否めません。

大野正貴・福祉管理課長は「受給者の実態はCWが把握する。民間任せにはしない」と話しますが、生活保護行政の根幹に関わる問題としての捉え方、受給者の権利やプライバシー保護の観点からの議論の不足は否めず、今後も注視していく必要があります。(2012)年9月9日高知民報)