2011年12月11日

コラムアンテナ 「世帯票 時代錯誤の象徴」

高知市には未だに全国的にも珍しい同和を冠した課名が残る
高知市内に13館ある「市民会館」=隣保館は、かつて同和対策事業が展開されていた時代、個人給付事業の対象者を明らかにする基礎資料として「世帯票」という同和関係者名簿を備えていた。

同和関連法失効から、まもなく10年がたつが、この「世帯票」が、未だに「市民会館」に備え付けられているというから驚く。

同市の「同和行政」は「属地属人主義」で、同和地区の線引き内に住んでいても、「属人」でなければ個人給付の対象者とはみなさなかったが、これがまた曖昧で、他地区から転居してきた者が「属人」であると主張した場合は、地区外から「属人」でない人が嫁いできたら、その子どもはどうなのか・・・

結局、運動団体や古老の意を汲んだ形での「認定」にならざるを得ず、どうしても恣意性を排除できないのが「同和行政」であった。

「同和行政」が「属地属人主義」をとったことで、住民に地区からなるべく出て行かないというモチベーションが強く働いたであろうことは容易に想像される。

そのことが線引き内外に壁を残す効果を「発揮」し、地区内外の交流が進まず、街づくりにとっても階層が単相化してしまうなど、足枷となっている印象がある。

「属地属人主義」の基礎となった「世帯票」を、法失効から10年経っても行政が手元に置くとはどういう感覚なのか。当然まともに更新もされておらず、何の役にも立たない名簿であるにもかかわらず。

同市人権同和・男女共同参画課では「鍵をかけて保管している」というが、必要もないのに重大な個人情報を安易に持ち続けることは危機管理の視点からもおかしい。

さらに指摘したいのは、「世帯票」所持は高知市が自ら定める個人情報保護条例に抵触するのではないかということである。

同市個人情報保護条例6条2項には「社会的差別の原因となる事項」に関する個人情報を実施機関=高知市は取り扱ってはならないとある。この解釈について同市総務課情報公開センターは「同和対策の対象地域の出身であるという事実に関する個人情報にあたる」としている。

さらに13条には「 実施機関は、保有の必要がなくなった保有個人情報については、速やかに廃棄する等の措置を講じなければならない」ともある。

このことを市行政関係者に問いかけると、問題があることは否定せず、「次回(2012年度末)の同和行政全体の見直しの中で議論になるはず」など歯切れの悪い受け答えに終始した。

誰が考えても行政が持ってはならない個人情報である。廃棄以外に結論はない。このようなものに固執すればするほど、高知市の体質の時代錯誤ぶりがあぶり出されてしまうことに早く気付くべきだろう。(N)(2011年12月11日 高知民報)