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追手門前「藤並茶屋」 この日もシャッターは閉まっていた |
高知城玄関口、追手門前の国有地に、「藤並茶屋」と称する老朽化した売店風の建物が存在しています。追手筋をはさんだ向かい側には、高知県が財務省から土地を買い取って新たに山内家資料を保存展示する「新資料館」を建設中。直近には山内一豊像があるなど、この周辺は高知県観光の目玉、顔として重要なスポットであるにもかわらず、いかにもバランスを欠く不正常な国有地利用がなぜ今日も続くのでしょうか。
現地には、石垣に貼り付くように2階建ての小屋が建てられ、3台の飲料水の自動販売機が設置されています。「藤並神社」碑前には、空き缶を入れるポリ容器が6個並び、古びたベンチが置かれています。
建物は老朽化し、年中シャッターが閉められ、売店として利用されている形跡は見られず、景観に悪影響を与えています。
11月16日、「高知城跡の保存と整備を考える会」(和田章会長)が県教育委員会文化財課に、高知城周辺の堀の復元などと併せ、「藤並茶屋」撤去を改めて申し入れました。
県教委担当者は「該当の土地は国(高知財務事務所)が管理している。国が個人に貸しているということなので、県教委としては何とも言えない」という回答。「考える会」は「県が新資料館を整備している今しか手をつける時はない。強く国に働きかけよ」と要請しました。
また中沢卓史・県教育長は高知民報の取材に答え「撤去したいという思いは同じだ」とコメント。撤去はしたいが、国が動かないのが要因という認識を示しています。
財務省四国財務局高知財務事務所に取材したところ、問題の土地は普通財産(※)であり、昭和20年代から続いてきた不法占有を整理するため、有償貸付契約を結んでいることは認めたものの、個人情報を理由に相手方の氏名、貸付料の金額、契約期間、面積など具体的な契約内容は明らかにしませんでした。
一方、田中明彦・同財務事務所管財課長は「現状は契約通りの貸付料が納められており、契約解除の理由がないが、県が利用する計画を申し出てくれれば、こちらは解除に向けて動くということは以前から言ってある」と述べ、県側にボールを投げ返していることを強調。県教委とは認識の乖離が見られました。
※普通財産 国が所有する財産のうち、公用に使われる行政財産以外の財産。行政財産と比べて貸し出しのハードルが低い。公園用地は行政財産にあたるが、高知財務事務所によると国有公園ではないため、行政財産には該当しないとしている。
高知市みどり課、高知財務事務所に取材した内容は以下
高知市みどり課 なぜあのようなものが建ったのか、経過はよく分からないが、今は高知市の管理になっている藤並公園も含め、早く整理して県が一元的に管理してほしい。
高知財務事務所 個人と有償貸付契約をしており、貸付料は滞納もなく入ってきている。個人情報に該当するので契約内容を話すことはできない。
高知民報 個人を識別する情報は出せないかもしれないが、使用目的や契約期間、貸付料などは出せるはず。高知県も高知市も撤去してほしいと言っている。
高知財務事務所 営業の実態はなく、自動販売機の設置だけになっている。経過は非常に古く、昭和20年代から、個人が建物を建て不法占有していたので、「そこは国有地だ」と指摘して、後追いで貸し付けの形にしたのが実態。民民の賃貸借と同様の契約になっている。
高知民報 今撤去しなければ、今後もずっと不正常な状態が続く。高知県側は国が動かないのが原因だと言っているが。
高知財務事務所 我々は何もない中では契約解除を申し入れる理由がないが、高知県や高知市が、「このように使いたい」と利用計画を出してくれれば動くと以前から言ってある。そこには認識のズレがあるようだ。(2011年12月4日 高知民報)
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