2011年10月30日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 
25 「構造改革」 基地・核施設と一線画す

県民の願いに応える県政が求められている 
尾ア正直・高知県知事がめざす県政の基本方向は、「構造改革」路線や基地や核施設など迷惑施設に頼ることとは一線を画し、農林水産業を軸にした県政浮揚、観光振興によって県民所得を向上させようというもので、この立場には確固としたものがある。

また公が果たす責務の重要性を認識して、安易なアウトソーシングや民営化には慎重であり、学校現場に教職員を配置することもこだわりをもってすすめている。

そこには自民・公明政権時代から民主党政権に引き継がれている新自由主義的な「構造改革」路線(規制緩和、官から民、地方切り捨て)の流れと、ある意味対峙し、この流れに翻弄されて疲弊し切っている高知県を、なんとか立て直そうと懸命に努力している構図が見える。

県選出の自民党国会議員は、基地や核施設に頼るような方向を執拗に迫ってきたが、このような流れが現在のところ封じ込められているのは、県民の世論と共に尾ア知事の姿勢によるところも大きい。

自民・民主・公明・社民各党や各種団体・労組など共産党を除く「オール与党」に担がれた元財務官僚であるのに、なぜこのようなことになるのか。

@高知県の置かれた客観的な状況 地理的な条件から大企業誘致によって活路を見いだす展望もなく、迷惑施設に頼らないという県民的立場に立つならば、農林漁業と観光で食べていくしかないと腹をくくらざるをえない実態が高知県にはある。

A県民世論と運動 県民の「構造改革」路線への反発、県土を金で売り渡すような迷惑施設ではなく、第一産業の発展でこそという声は圧倒的な県民の願い。教育条件整備を求める粘り強い保護者や教育関係者の運動も根強く続いている。このような県民世論の動向が尾ア知事の姿勢に少なからぬ影響を与えていることは明か。

B知事本人の思い 尾ア知事は高知県で生まれ育った人間として、高知県をなんとかしたいという個人的な思いを強く持っていることが発言の端々から感じ取ることができる。県政トップこの思いは、県政の方向性を定めて行く上では極めて重要。

このような尾ア県政の積極面を担保する原動力になっているのが県民との「対話」であり、産業振興計画策定の過程で接点を持ち議論を重ねた広範な県民各層からの声だった。

まじめに「対話」を重視する姿勢に立つならば、政治思想にあれこれの違いがあったとしても、導かれる結論は県民の願いに沿わざるを得ない。尾ア知事が発揮している積極的な側面は「高知県知事」というポジションがそうさせているともいえる。

尾ア知事は自ら「3期まで」と明言しており、その後は国政に転じることも予想される。将来的にどのような方向に向かっていくのかは現時点では計り知れない部分もある。

だが県政の現状を客観的に見るならば、「構造改革」路線に抗い、第一次産業と新エネルギーを軸にした県勢浮揚を真剣にめざしている尾ア知事の姿勢は、学力テスト偏重や子育て分野での弱点はありながらも、県民の願いに応える姿勢を見ることができると評価することができるのではないだろうか。(おわり)(2011年10月30日 高知民報)