2011年10月16日

載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 
24 堅実な脱原発を指向

2011年6月23日、四国電力幹部と面談する尾ア知事
尾ア正直・高知県知事が、就任直後の県議会で高レベル放射性廃棄物処分場に「否定的だ」と答弁したことは既に紹介したが、3月11日以降の原子力発電や新エネルギーへの転換についての知事の姿勢を振り返ってみる。

4月28日の定例記者会見で知事は「原発という、いざとなったら甚大な被害をもたらしかねない危険な施設(中略)は、想定よりはるかに余裕のある備えを今後はすべての基本にすべきであり、全国の原発もそういう視点で見直してもらいたい。いきなり稼働している原発を全部止めることは現実的ではないとは思うが、だんだん原子力発電から脱却していく方向を国全体としてめざしていかなければならない」という重要な発言をしている。

原子力発電から脱却すべきであるという方向性を持ち、一定の時間をかけて依存度を下げていくという「現実的な脱原発」は、尾ア知事の本音と思ってよいだろう。

県の第一次産業を振興させ、県産品を県外に売ることで高知県を発展させることに強いこだわりを持つ尾ア知事にとって当然のことであろう。

6月17日に開かれた四国電力副社長らと勉強会の場で知事は「福島の電源喪失は揺れによる配管のずれが原因という見方も有力」と指摘し、「人智の積み重ねをあっさり覆すような想定外の事態を自然は起こし得る。危機管理の発想が必要だ」と重ねて要請。この中では「安全だから安全だ」といわんばかりの四電の姿勢に納得せず、「非常に心配だ」と語気を強めて批判するなど、四国電力への不信感をあらわにする場面もあった。

停止している伊方原発再稼働の是非にについては、あまり多くを語らないが、慎重姿勢を崩さない愛媛県知事と歩調を合わせていることが読み取れる。

「理想を胸に抱きながらも現実的な対応がいる。一定期間は原発に頼らざるをえない時期がどうしてもある。だからと言って安易な再稼働はあってはならない。徹底した危機管理の発想での安全管理が必要だ」(9月30日県議会予算委員会)

原発依存からの脱却という理想を持ちながらも、自然エネルギーへの代替が進むまでの間はやむを得ず原発に頼る部分が出てくるという答弁であったが、同時に知事がこれまで繰り返している「危機管理の発想での安全管理」をその前提として示した。

知事が言う「安全管理」とは、想定される地震の揺れや津波被害よりも、はるかに裕度を持たせた基準をクリアすることであるが、老朽化して脆性劣化が心配されている1号機や2号機、とりわけハイリスクなプルサーマル運転をしている3号機など(1号と3号は停止中)は、どれもおいそれと再稼働を容認できるようなものではないことははっきりしている。

林業振興・環境部内に新エネルギー推進課という課を新たに置き、脱原発の全国一の理論家と言ってもよい飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長をアドバイザーに据え、孫正義・ソフトバンク社長が提唱した大規模太陽光発電などに取り組む「自然エネルギー協議会」に県としていち早く正式参加するなど、実際の動きは確実に脱原発の方向へとすすんでいる。

このことは高知県が日照時間、雨量、森林など、自然エネルギーの潜在能力が高いにもかかわらず、現在は原油や電気料金として県外に莫大な金を吸い上げられている現状を、地産地消型のエネルギーへと変え、地域に金が循環する仕組みに反転させることで県勢を浮揚させようと知事が本気で指向していることのあらわれといえる。(つづく)(2011年10月16日 高知民報)