2011年10月9日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 23 イデオロギー持ち込み否定

自民党が単独過半数を占める高知県議会
尾ア県政は日本共産党をのぞく「オール与党」に推される形をとっており、県議会の圧倒的な第一党は自民党で、今年4月の県議選挙では同党が単独過半数を制したことから、尾ア県政の一挙手一投足は、自民党県議団の意向と無関係では済まないという現実がある。

このような状況下、自民党県議団は若手議員を中心に「右旋回」を強め、県議会の場で極右イデオロギーを前面に出す質問が目立つようになっている。

9月27日の県議会本会議では同党の桑名龍吾議員が(高知市選出、48歳)、公立中学校における歴史・公民教科書の選定について以下のような質問をしている。

「今回、検定に合格した教科書の中には、日本の歴史に誇りを持たない記述がされているものや、領土問題や外国人参政権の記述について、日本国の教科書とは思えないものもある」

「権利と義務のはき違え、自虐史観からくる愛国心の欠如など戦後教育がもたらした様々な弊害が国の力を衰えさせている」

「愛国心を損なう自虐史観を植え付ける教科書や、自衛隊は憲法違反の疑いがある組織であり、国際貢献活動を行うにふさわしくない組織であるという考え方を生徒が持つ可能性を否定できない教科書で教育することについて、南海地震で第50普通科連隊の支援を仰がなければならない本県の知事との所見を聞く」

日本の歴史をすべて美化し、侵略戦争肯定、日本の加害には触れず、憲法の内容より改定に重点を置く記述、原子力発電の際立った安全神話、図版の著作権侵害の疑い、通説を踏まえない特異な記述により入試でも不利になることが指摘されるなど、様々な問題を抱える育鵬社、自由社の歴史・公民教科書が県下で採択されなかったことを問題視して食ってかかる特異な質問だった。

中沢卓史県教育長は「手厚く慎重に調査し、適正かつ公正な採択の確保を指導した。こうしたことを踏まえ適切に採択している」、尾崎正直知事も「各教委の責任と権限で十分な調査研究と協議をして、適正かつ公平に採択されている」と取り合わなかった。

尾ア知事個人は格闘技の愛好家で、初選挙時には右翼団体のスローガンに多用される「草莽崛起」を冠する団体に担がれて出馬するなど、右翼的色彩が見え隠れするが、こと県政に関わる部分では、イデオロギーの持ち込みを否定することには、相当なこだわりをもっていることが読み取れる。(つづく)(2011年10月9日 高知民報)