2011年9月25日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 21 TPP参加 「あまりにも拙速」

TPP反対を決議した臨時県議会(2010年11月30日)
地方政治の主要な対立軸になっている「構造改革」に向き合うスタンスをめぐり、尾ア県政と自民党県議団、さらに民主党県連との間に容易ならない矛盾が生じている。

その典型がTPP交渉(環太平洋戦略的経済連携協定、すべての品目の関税を撤廃して自由化する協定)で、この問題について尾崎正直県知事は参加には批判的な見解を繰り返している。

昨年10月29日の定例会見で「守るべきものは守る」とのスタンスを示し、「世界の客観情勢を考えた時、食糧の自給ができる国であるべき。食料はいくらでも輸入できると考えるほうが甘い。国内農業、一次産業をしっかり守り育てていく国であるべきだ」。

同年12月1日の定例記者会見では「正直なところTPP問題には賛成できない。あまりにも拙速」と述べ、反対姿勢をより強調している。

「農業をはじめとする一次産業の足腰をしっかりさせることは国全体として非常に重要。今後の世界情勢を考えれば、食料自給率を高める方向性は大いに賛成で、本県は大いに貢献できる県だ。しかし、その点に大きな脅威となるにもかかわらず、十分な対策が見えてこない、はっきりしないにもかかわらず、交渉に入っていこうというのはあまりにも拙速。方策はTPPだけなのか。他の手段もあるのではないか。なぜTPPしかないみたいな結論になってしまうのか。検討が足りない」。

TPP参加はアメリカと財界の強い要請に応え、菅前政権が唐突に参加を持ち定したものであるが、県内の農業・林業・水産関係者などから「壊滅する」という厳しい批判の声があがっている。

尾ア県政の最大の力点は言うまでもなく「産業振興」であり、中でも「食べることができる」第一産業をめざすことが最大の柱。この柱と真っ向からぶつかり対立するのがTPPであり、尾ア知事にすれば、到底容認することはできない。

しかし、民主党はもちろん、自民党中央も、この問題で根は同じで、積極的に加盟をすすめる基本方針を持っているため、現場の切実な声、尾ア知事の動向との間で、民主・自民県議は立ち回りに腐心しなければならなくなっている。

昨年11月30日の臨時県議会で、賛成多数で採択された交渉不参加を求める意見書は、「日本共産党と緑心会」が提起し、自民党県議団とすりあわせて提出された。反対は全議員の中で、民主党県連幹事長を務める大石宗議員1人だけだった。

意見書を共産会派とともに提出した自民党県議団の事情も複雑だ。農協関係などに強い反対があるため、共産会派とも共同歩調をとらざらるえない実態がある一方で、民主党から政権を奪還した後の自民政権がめざすのは、農業所得補償撤廃やTPP参加という完全な農業自由化、『構造改革』復活でしかない。このような方向性が県内関係者に支持されるはずもなく、尾ア県政のめざす方向とも対立している。県政与党が目指す方向と、知事が目指そうとするものに矛盾が生じていることは注目される。(つづく)(2011年9月25日 高知民報)