2011年9月25日

セシウム137 高知では平常 核実験・チェルノブイリより影響小さく

福島第一原発事故から6カ月。800キロメートル以上離れた高知県に、事故によってどの程度、放射性物質の影響があるのでしょうか。

県衛生研究所の調査によると、高知市では事故直後の4月にセシウム137の濃度が高くなりましたが、5月以降は落ち着き、8月は検出されていません。

事故の影響を正確に見るためには、平常の値がどの水準にあるかを把握していなければなりません。

高知市丸ノ内にある高知県衛生研究所(今井淳所長)では、1963年から国の委託を受けて、雨や空から降下してくるちり等の中のセシウム137の濃度を測定し、記録を続けています。

別項のグラフは1963年から2011年まで、年ごとの、セシウム137の月間濃度の最大値をあらわしています。

1963年に大気圏における核実験を禁じた「部分的核実験禁止条約」が締結されますが、ビキニ実験など条約以前にアメリカ、ソ連、イギリス、フランスが大気中で核実験を繰り返した影響を強く受け、63年、64年には高知県
でも高い濃度が記録されていますが、その後濃度は低下していきます。

ところが86年4月16日に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故によって、同年5月の濃度が跳ね上がります。翌月には濃度は低下し、平常値に戻り、以後は20年以上、低い水準で推移していましたが、2011年4月に福島第一原発事故の影響で数値が高くなっています。

県衛生研究所・西森一誠技術次長は「セシウム137は、昔からよく測定され、原子炉から出る核種なので原発事故の影響を見る上では適している。高知県では63年からバックグラウンドの放射能の水準を測定してきた。4月に数値が上がったが、すぐに平常値に戻っているので、高知県で生活するには環境の放射能の影響に過敏になる必要はない」と話しています。(2011年9月25日 高知民報)