2011年9月18日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 
S米軍基地「高知の強み殺す」

宿毛湾港池島岸壁に接岸する「オカーン」
(2008年5月21日)

尾ア正直高知知事が就任する前の2006年を前後して、県内港湾の軍事化、米軍基地や訓練を誘致して「活性化」しようという動きが強まりをみせる。

06年5月に米海軍イージス駆逐艦ラッセル、08年同オカーン、10年巡洋艦レイクエリー、11年揚陸艦トーテュガと、立て続けに米海軍戦闘艦船が宿毛湾港に入港。

軌を一にして08年には宿毛市で米軍艦載機NLP(航空機の夜間発着訓練)を誘致する動きが活発化し、商店街関係者が動いて中西清二市長が「市民の強い要請があれば調査するのも一考」と向き答弁をしている。

このような動きの背景には県選出自民党国会議員の影があった。

05年4月21日、東京の都道府県会館で開かれた県選出国会議員と県幹部の意見交換会の席上、自民党の中谷元衆院議員(高知2区選出)は、「自衛隊のヘリ誘致を高知でも考えてはどうか。米軍についても沖縄で代替地がない。宿毛、大月、三原で考えるのはメリットがあるのではないか。ただし勇気が必要」。

山本有二衆議院議員(3区選出)は「高知は独立不可。他の所に必要とされることが必要。今の財政状況で何もしないのはおかしい。青森陸奥市核燃料中間管理施設、山口や島根の刑務所誘致などできることは色々検討すべき」と、やはり「迷惑施設」の受け入れをすすめた。

この時の中谷・山本議員の言葉通り、佐賀町、津野町、東洋町、大月町などで核廃棄物処分場誘致の動き、宿毛市のNLP誘致が急浮上する。

これらの動きは、多くの県民の反対でいずれも頓挫するが、ここで尾ア知事が果たした役割は見逃せない。

第一次産業、一・五次産業と観光立県を軸に、何とか高知県を立て直そうと全力をあげている尾ア県政にとって、「迷惑施設」に頼ることは看過できるものではなかった。

知事の発言は米軍基地や訓練誘致に極めて消極的であり、自らの選挙を支えた自民党県連への手前、オブラートに包まれた歯切れの悪さはあるが、実質的には全面否定している。

米軍艦入港については、頻繁に入港し軍港化を既成事実化しようと狙う米軍の思惑への無警戒さはあるものの、橋本県政と同様に入港にあたっては核兵器を搭載していない非核証明を求める(外務省に)対応を継続。

また尾崎知事は「宿毛湾港は商業港だ。民間の利用が常に優先され、空いてなければ米軍の寄港はできない、我々も許可することはできない」(10年2月2日の定例会見)と、あくまでも商業港であることを強調している。

県内への米軍基地誘致についても「私は反対です。私自身も米軍基地のそばにいる友人がいますが、そりゃあ夜間の発着訓練なんかすさまじいですよ。それぞれの県にそれぞれの特性があると思いますが、特に本県のように自然に強みを持っている県においては、強みを殺してしまう施設だと思っていますから、将来の発展する要素を失ってしまうことになりかねないことであって、私は反対です」ときっぱり否定している。(10年4月28日の定例会見)

さらに10年6月県議会で、中根佐知議員(共産)の「米軍が自衛隊演習場などを共同使用して訓練することにも反対して県民の不安を解消すべきだ」という質問に対して、以下の答弁をした。

「本県においては米軍の低空飛行訓練が現在も繰り返し行われ、たび重なる中止要請を行う中、墜落事故が過去2度発生している。訓練などの受け入れは、本県が今後発展していくための財産となる自然や観光資源等の価値が大幅に低減することも考えられ、県民生活にこの点からも大きな影響があると考える。県民生活へのさまざまな危険性や悪影響を伴う訓練などの受け入れは、県民の皆様の御理解を得ることは極めて難しく、県としてもこうした負担を受け入れることはできない」

陸上自衛隊第50普通科連隊駐屯に批判的観点はまったく持っていない尾ア知事であるが、米軍の基地や訓練については、産業振興の妨げになるとして否定する姿勢は一貫している。このような知事の姿勢を自民党県連は批判することができず沈黙。同党に根深く沈殿する核施設や基地の誘致などのカネで県土を売り渡そうという動きが、尾崎知事の姿勢によって封じ込められているともいえる。(つづく)(2011年9月18日 高知民報)