2011年9月11日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」
R西武跡地 高買を拒否

「市民団体」から西武跡地購入を陳情される尾ア知事(2010年1月28日
これまで尾ア県政が取り組んできた産業振興、教育、観光など各政策の内容とともに、県政の底流に「オール与党」に支持される古い政治体質の一方で橋本県政を継承しての県民生活向上への努力、単純に自民党県議団に引きずられているわけではない実態などを紹介してきたが、今号からは尾ア県政が自民党県議団の思い通りになっていない側面をもう少し具体的に紹介していく。

2009年から翌年にかけ、高知市南はりまや町の西武デパート跡地にパチンコ店が建設される可能性が急浮上し、県民的な議論が沸騰する。

「市民団体」が県が跡地を買収することを求め署名活動に乗り出し、「高知新聞」も「高知の顔をパチンコ屋にするな」というキャンペーンを展開する。

「市民団体」の代表は土佐電鉄社長、メンバーには民主党県連役員の自治労出身・川添義明元県議、松尾哲人・元高知市長(故人)などが並び、署名集めの実働部隊としては労働組合・連合高知が動いていた。 

署名活動に先立って、土佐電鉄取締役会長の西岡寅八郎・自民党県議らが動き、買収やシキボウ跡地と交換するなどにより西武跡地を県有地にすることを求める話が浮上したものの頓挫している。

そもそも土電が土地を手放したことが今回の騒ぎの要因となっているわけで、自ら手放しておきながら、「県に買い取れと」は、おかしな論理であるのだが、もちろん県も「高知の顔」をパチンコ店にすることを了としているわけではなかった。

自民党の超ベテラン県議が会長を詰める企業から提起された問題であり、民主党や連合高知までが加わる「オール与党」から熱心な働ききかけを受けることになるが、結果的に県が下した判断はNOだった。

尾崎正直・県知事は2009年12月24日の記者会見で「鑑定価格を上回る買収は違法でありできない」と述べた。発言の詳細は以下。

「多くの県民が、この問題について心配しておられることと思う。私個人としても、高知の生まれであり、個人的には思いを持っているつもりだ。西武跡地を何とかすることができないかということで、県としてもいろいろなことを考え交渉してきた。土地を直接取得することはできないのか、他の土地と交換することはできないのかと考え、交渉を続けてきたわけだが、残念ながら所有者の都合もあり、何よりも取得するにしても、価格について折り合いがつかなかった。さんざん県としてもいろんなことをやってきた結果として今に至っている。行政があの西武跡地の土地を取得するということは、鑑定評価による適正価格を大きく上回る金額で取得することはできない。違法となる。裁量権の濫用になって法律違反になる。県民の皆様から預かっている税金を使って土地を取得するなら、鑑定評価の価格を参考にした適正価格でなければ購入できない」

このように尾ア知事は、「オール与党」支持層と地元紙のキャンペーンに抗して、高買いを拒否した。

土地の形状も悪く、たとえ県が購入しても活用できないという、どう考えてもありえない選択ではあったが、それでも、この問題についての尾ア知事の判断は評価でき、「誰の頼みでも筋が通らないことは認めない」という、見識を
発揮した出来事だった。

※2011年5月、跡地を賃借した延田エンタープライズが「パチンコ123」を開店した。(2011年9月11日 高知民報)(つづく)