2011年9月11日

コラムアンテナ 野田新総理よどこにいく

 高知新阪急ホテルで演説する野田佳彦氏(2010年5月23日)
「どじょう」、「1000円散髪」など、地味な庶民派を気取る野田佳彦新首相。財務省・財界の近く、消費税増税至上主義者であることが浸透しているので、イメージ払拭に懸命なのだろう。

だが、いくら庶民の味方のようなことを言っても、新政権誕生を手放しで歓迎する財界の反応をみれば、お里が知れる。
 
経団連の米倉弘昌会長は「政策に通じた非常に安定した行動力のある政治的リーダー。民主党の議員は非常にいい結論を引き出した」と絶賛し、会談を終え、両手で抱きかかえんばかりに新首相の手を握りしめた。

野田氏は昨年5月23日、広田一参議院議員の選挙応援のために蓮舫参議院議員と高知市で演説している。

当時財務副大臣だった野田氏は「必殺仕事人・蓮舫さんのボディーガードで来ました」などと相変わらず軽口を叩きながら、持論の増税には触れず、無駄遣いをなくし、子ども手当や高校無償化など、政府が家計を支援する政治実現を訴え、「これがバラマキですか」とそれなりに真っ当なことを言いながら、肝心なことは駄洒落で誤魔化す、ヌルヌルとした掴みどころのない話をする人物だという印象が残る。

今日の日本の政治の真の対決軸は「民主党か自民党か」、「小沢か非小沢か」などという皮相なところではなく、震災後のどさくさにまぎれた「構造改革」路線への火事場泥棒的な駆け込み(渡辺治・一橋大大学院教授)を許すのか、国民生活に配慮した福祉国家的な路線を選択させるのかのせめぎ合いにあり、@原発廃止、A消費税増税、BTPP参加が、そのメルクマール(目印)と考えることができるのではないだろうか。

2年前の政権交代は、自公政権の「構造改革」路線を有権者が否定し、曲がりなりにも「生活が第一」を掲げた民主党を支持し実現した。鳩山政権の弱点を言えばきりはないが、子ども手当、高校無償化、農業戸別所得保障など、政権交代の初心をなんとか実現させようとしていたのは確かだった。

菅政権は消費税増税やTPP参加を打ち出して、「生活が第一」から後退し、国民の批判に晒されるが、首相のイニシアチブで浜岡原発を止め、たちまち個人的見解に矮小化されたとはいえ、「脱原発」を首相が一度は唱えるという、財界が許すことのできない空間が一時的には生み出された。

そして野田新政権。日本共産党の市田忠義書記局長は「財界直結、事実上の民主・自民・公明の翼賛体制内閣」と評したが、原発再稼働、消費税増税、TPP参加への新内閣の態度を見れば、「生活は第一」の余韻は微塵もなく、「構造改革」推進しか見えてこない。

民主党内の数合わせで「融和」し、自民・公明との三党合意で翼賛体制を強めようと、国民生活との矛盾激化は避けられず、早晩行き詰まることは明らかだ。草の根から「構造改革」的な流れを許さない共同を強め、対峙していくことが大事になる。(N)(2011年9月11日 高知民報)