2011年9月4日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」
Q議論沸騰三志士像

三志士像の前で記念撮影をする観光客
NHK「龍馬伝」の生家セットを3億8000万円かけて高知駅前に陳列するプラン以上に、「偽物頼みの観光」と県民的に手厳しい批判が噴出したのが、桂浜とJR高知駅前への三志士像設置問題だった。

本年2月8日に開かれた「志国高知 龍馬ふるさと博」運営委員会(委員長・宮村耕資氏、旅行業者や観光関係者が委員、マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏が総合アドバイザーを務める)で、県観光観光振興部が提案した、土佐勤王党結成150周年にスポットを当て、桂浜の坂本龍馬像の両脇に中岡慎太郎・武市半平太の樹脂製の像を置き、さらに坂本龍馬の像を加えて高知駅前に並べ据えるという、奇抜な案が了承された。

この案が報じられると、たちまち「本物軽視」、「龍馬の聖地桂浜を汚すな」などという強硬な反対意見が県民から相次ぎ、議論が沸騰。あまりの批判に県と同運営委員会は2月23日、当初想定していた3月5日からの桂浜への設置を断念し、一時凍結せざるをえなくなった。さらに3月11日の東日本大震災を受けて、桂浜への像の設置は完全に不可能となる。

それから曲折を経て7月9日に、高知駅前にオープンした「龍馬伝」生家セット館開館行事にあわせ三志士像を同駅前に並べることになった。

高知駅前に3体の像を並べるのにかかったトータルのコストは約1000万円(龍馬ふるさと博推進協議会への県補助金内で執行されている)。像を見た県民からは「像のデザインが悪い」、「ぽっちゃりしずぎ」などの手厳しい声も聞かれるが、「現地(桂浜、室戸、横浪)の像の写真をたくさん撮って、岡山の業者に複製してもらった。ぽっちゃりしているのは元の像がそうなっているということです」と県龍馬ふるさと博推進課担当者は話す。

尾ア県政が提示した「志国高知 龍馬ふるさと博」の目玉は、結局のところテレビドラマのセットと樹脂製レプリカ像という「偽物」ばかりになってしまった。三志士像の前で記念撮影をする楽しそうな旅行者の姿も目立つが、県としては、「あくまでも県観光の導入部分。ここで関心を持ってもらい、実際に各地に足を運ぶきっかけに」とするが、狙い通りに事が運んでいないのが実際だろう。

テーマパークのアトラクションのような即効性、インパクトを追い続けるスタンスは、県外から観光客を誘致して「外貨」を稼ぐために懸命であることには違いないが、そこからにじみ出る文化の貧困さ、底の浅さはいかんともしがたいものがある。同時に「観光で金を稼ぐにはミーハーも大事。目くじらをたてるほどのことはない」との声もある。

ブームに乗れるだけのって、外貨を稼ぐのも大事だろうが、一時の消費だけでなく、歴史とじっくり向き合った本物の観光を育てていかなければ、高知県観光に未来はないということははっきりしている。(つづく)(2011年9月4日 高知民報)