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11年7月7日、完成した生家セット館前でインタビューを受ける知事 |
空前の「龍馬ブーム」を生んだ大河ドラマ「龍馬伝」放送終了後の落ち込みを、いかに回避するのかが、2011年度「志国高知龍馬ふるさと博」の最大テーマだった。
メインコンテンツとして「旅行商品にしやすいインパクト」を求める旅行代
理店の要望に応える形で、県観光部門からトリッキーな奇策が浮上する。「龍馬伝」の撮影に実際に使用した生家のセットをNHKから購入し、JR高知駅前に展示するというものだった。
県は生家セットを約7500万円かけて購入。さらにセットを置く箱を3億円余り投入して高知駅前の広場に建設するという大規模な事業となった。
日本共産党の米田稔議員は2010年10月1日、県議会本会議で以下の質問をしている。
「龍馬記念館の充実や桂浜公園整備など本物の龍馬に接近してもらえる事を検討し、高知にしかない歴史と文化、自然を生かすことを観光政策の基本にすべき。しかし、県はまたまた龍馬の名前をつけたイベントを繰り返し、偽物の龍馬の生家を再現する計画。あまりにも底が浅い。7500万円もする生家セットは、所詮テレビドラマで使ったにすぎない。セットは廃棄処分するものだが、金額の根拠の説明を求める。目的も効果も定かでなく、一旦白紙に戻して再検討すべきだ」
尾ア正直県知事は「(ドラマが終わっても)引き続き誘客を促すため龍馬ブームが続いているうちに新しい話題を提供することが大切。ドラマのセットの中に実際に入れることは強力なコンテンツになる」と話題提供のために有効であると強調し、「時代考証をしかっりやっていて、生家そのものとしての内容を併せ持つ強力なセットだ。(略)中に入ると幕末が再現され、精巧に作られている。旅行会社も、そういうものがあるのなら必ず商品に組み込むと
多数言っており、集客の目玉として一定有効ではないかと考え、NHKに相談してセットと中身の作り込みについて7500万円でやってもらうことで合意した」と充分な費用対効果をもらたすものであるとした。
生家セット館の名称は「『龍馬伝』幕末志士社中」。展示内容としてはドラマで使われた衣装、他の観光地へのハブ機能を果たすという触れ込みの坂本龍馬以外の志士を紹介したパネルなども多少はあるが、セットの展示が大半を占めている。入場料は大人500円、子ども250円で、「ドラマのセットだけで本当に客が入るのか」という懸念の声も強かったが、2011年7月9日の開館から39日目の8月16日に入館者が3万人を突破し、県の予想を現時点では上回る出足になっているという。
しかし、県が目指す来年3月末までに15万人の来客をクリアするのは並大抵のことではなく、さらに尾ア知事はこの施設を「専門家から3年から5年は持つという意見をいただいた」(2010年9月17日記者会見)と、単年度限りの事業ではないという説明をしており、現在の「好調」ぶりが「いつまで持つのか」という不安材料も多い。
そもそも、駅前のパビリオンに短時間の入館者があったとして、県内の実際の観光にどれだけのプラスになっているのかは不透明であるし、「偽物で見た気になってしまい、観光地に足を運ばなくなってしまうのではないか」という
指摘もある。多額の県費を投入した取り組みであり、費用対効果を県民に説明する責任が求められる。(つづく)(2011年8月28日 高知民報) |