2011年7月31日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 
M首都圏アンテナショップへの執念

まるごと高知 銀座1丁目
尾ア正直高知県知事にとって最も思い入れが強いのは、地産外商=高知県産品を県外に売り、県外から観光客を呼び込んで「外貨」を稼ぐことであるのは、衆目の一致するところ。今回から尾ア県政の産業政策の目玉である地産外商と観光について紹介していく。

尾ア知事は自民党政治の影響を色濃く受けた中央官僚出身政治家であることから、国の施策に異を唱える手法を好まず、永田町と霞ヶ関に食い込んで情報をとり、他の自治体に先んじて補助制度を活用して実利をあげることに問題意識があることは、これまでも紹介したが、激しい他都道府県との競争の中で、県産品の売り上げを伸ばし、販路を切り開いて県外客に高知県観光に足を運んでもらうためには、霞ヶ関に頼っているだけではいかんともしがたく、置いてきぼりを食うのは必至である。

そのために尾ア知事は、官僚出身とは思えない腰の軽さ、「株式会社高知県」社長といわんばかりのフットワークで2009年度から急速に突っ走りはじめる。

この年度は尾ア知事自らが本格的に予算編成と人事異動を手がけた「実行元年」で、最大のポイントは産業振興推進部を設置し、08年度に策定した高知県経済上昇への切り札である県産業振興計画実践に総力をあげる態勢をとったことだった。

08年12月県議会で尾ア知事は、首都圏にアンテナショップを09年度中に開店することを提案。調査のため予算を計上し、以下のような説明をしている。「各産業分野の企画・生産・販売に至る地産外商戦略を支援するための一つのツールとして、首都圏のアンテナショップを充実する。4月から庁内ワーキンググループを設置し、機能や立地条件、運営方法などを検討してきた。店頭販売だけでなく、外食・中食業者や卸小売業者などへの県産品のセールス拠点、新たな取り組みを進めるためのテストマーケティングの場、さらに観光情報などを発信する広告拠点とする」

この時点での知事の認識は、現在、東京・銀座に出店されている「まるごと高知」にもれなく引き継がれており、考え方にブレは見られない。

こうして、首都圏への新アンテナショップ設置は、県政の一種のシンボル的な存在となり、2010年夏のオープンまで中心課題のひとつになっていく。

08年12月県議会で田頭文吾郎議員(日本共産党と緑心会)が、新アンテナショップについて、より慎重な対応をすべきという立場で質問している。「09年度ありきで、肝心のことが一つも決まっていないわけでしょ、大事なところは。事業主体だって形態だって今からやるわけでしょ。僕はやっぱり逆だと思いますよ。どういうものをつくってどうするのかが、まずやられなければならんことやないですか。(多額の)費用をかけて、まだ定まっていないのに既定ありきという方向はちょっと拙速じゃないかなと。まず肝心のことをやらなけりゃ」と知事をいさめた。

尾ア知事は「普通の県、多くの県は当たり前のように都心に持っておるものが、なぜか知らないけれど高知県だけ辺ぴなところにあって(吉祥寺と築地)、十分な情報発信力を果たしていない、これでいいのか。多くの県が当た
り前のように取り組んでいることだ」と他県と肩を並べて出店するのが何故いけないのかとばかりに、語気強く反論した。

知事が09年度中の開店にこだわったのは、10年1月からNHK大河ドラマ「龍馬伝」の放映が決定したことと無関係ではない。大河ドラマという、降ってわいた「追い風」を生かすという名目で、とりわけアンテナショップと観光をめぐり、県政の前のめりが目立つようになっていく。(つづく)(2011年7月31日 高知民報)