2011年7月24日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行は本物か」 
L少人数拡大への努力

2010年8月24日、県・高知市トップ会談
これまで見てきたように尾ア県政における教育行政は、全国学力テスト=全数調査を絶対視して学校や市町村をPDCAサイクル手法で評価コントロールして競わせることを原動力に学力向上をはかろうとするという重大な弱点を抱えている。

この手法は、教育版「新自由主義」の流れをくむもので、尾ア県政の最大のウィークポイントであり、前県政から最も大きく方向性が変化した分野である。

同時に尾ア県政においては、県議会で絶対多数を占める自民党県議団の少人数学級敵視、教育現場の困難を現場教員の資質や努力不足だけに押しつけ、教員配置をはじめとする条件整備を放棄する傾向とは一線を画していることを正確に見ておく必要がある。

自民党県議団は少人数学級を橋本県政時代から一貫して敵視してきた。 

「昔は50人、60人いたが教室は静穏だった。教師が教室をまとめる能力がないのではないか」(2006年3月6日、森田英二議員の本会議質問)など、地域や家庭の教育力の後退、クラスの中で発達障害児が増加するなど、困難を抱える学校現場の実情を無視し、教師が楽をしたいがために教職員組合が要求しているかのような旧態依然としたとらえ方から少人数学級攻撃に終始し、その発想は今日も変わっていない。

尾ア県政はこのような自民党県議団の圧力と、ある意味対峙して、可能な限り、学校に教員を配置すべきであるという方向で、前県政が導入した小学校の35人学級や中学校30人学級を基本的には維持継続してきた。

さらに自民党県議団の高知市選出議員も含め、「高知県の低学力は高知市がダメだから」というバッシングを受け続けている高知市教委に対し、人手が足りないという学校現場の要請に応える形で、教員補助員など臨時的職員ではありながらも、学校に人を配置することにこだわった施策を打ってきた。

このことは、高知市が置かれている教育条件には特有の困難があり、現場の教員を攻撃するだけでなく、独自に条件整備をする必要があるということを尾ア知事や県教委が認めていることになる。

県議会では、この高知市への独自支援策も、自民党議員を先頭に「特別扱いするな」という大合唱に晒されているのだが、尾ア県政はこれを堅持してきた。不十分さはあっても、学校に教員を配置することへの尾ア県政の努力は評価されるべきものがある。

一方、尾ア知事には「これだけ高知市を手厚く援助しているのに成果が上がらない」という思いからか、高知市への干渉ともいえる場面が目立つようにもなっている。昨年8月24日、県・高知市トップ会談の場で尾ア知事は松原和広・高知市教育長に対し、報道関係者の前で、中学生の全国学力テスト順位が低迷を続けていることについて、強い調子で「長期的課題だと何十年も言ってきた。今変えなければならない。その成果を県民市民が待っている」と叱責する光景が繰り広げられた。

また今年6月県議会で中沢卓史・県教育長は、「学テの結果を高知市は公表すべきだ」という趣旨の答弁をした。「結果の何を公表すべきだと考えているのか」という取材に対しては、「それは高知市教委が考えることであるが、市全体の平均点を出すくらいはやってもらいたい」と述べている。

全国学テで全国水準入りをめざすため、自民党県議団の圧力に抗してでも学校に教員を配置し、高知市には学テ結果の公表を強引に迫るという尾ア県政の教育行政は、単純には評価することはできない複雑さをもっている。(つづく)(2011年7月24日 高知民報)