2011年7月24日

放射能汚染牛肉が食卓に 「どこまでひろがる」県民に不安 全頭調査に国の責任急げ

 
 上=月12日の記者会見(高知県庁)、下=基準値を超えるセシウムが検出された牛肉
福島県南相馬市の畜産農家から出荷された放射性物質・セシウムに汚染された牛肉が、高知市のスーパーで販売され家庭の食卓に上がったことが7月12日判明したことは、県民に重大な不安を与え、行政や小売り業者など関係者に衝撃が走りました。福島第一原発の事故は今もって収束の目処が立たず、放射能汚染の拡大に比例して汚染された肉が全国に広がっています。高知県と高知市は汚染された肉を食べても「健康に影響はない」と繰り返しますが、消費者の不安は高まるばかり。国民の安全を守るために国と自治体が責任を果たさなければなりません。

7月12日13時、県食品・衛生課と高知市保健所が記者会見を開き、高知市のスーパー「フジ ヴェスタ桜井」(本社松山市)が6月9日から20日にかけて販売した「国産黒毛和牛小間切れ」、「国産黒毛和牛カレー用」168パックがセシウムに汚染されている可能性があることを公表。

同日20時30分には同スーパーに返品された「小間切れ」を県が検査したところ、キロあたり基準値500ベクレルを大幅に超える2710ベクレル、1547ベクレルのセシウムが検出されたことを明らかにしました。(16日には1600ベクレルの肉が発見されている)

会見では入福聖一・県健康政策部長と堀川俊一・高知市保健所長が、「この肉を200グラム毎日食べても、基準値の200分の1であり健康への影響はない」と強調しました。しかし、セシウムの半減期は30年間あり、汚染肉による内部被曝のリスク、とりわけ子どもへの影響を避けなければなりません。

県民は今問題になっている牛肉からだけ被曝するわけではなく、年間トータルの被曝量も考慮せず、ただ「健康への影響はない」と繰り返すのは、いささか無責任であるといえます。安全な被曝量は存在せず、できる限り被曝量を減らすべきであることは当然ではないでしょうか。

松山市からの情報を受けた高知市保健所の対応が緩慢で一刻を争う対応をしなかったこと、高知市と県の連絡がうまくとれていないことなどが、報道で厳しく批判されていますが、それぞれの機関に反省すべき点はあるものの、問題は都道府県を超える広域的で、かつ前例のない異例な事態であるにもかかわらず、国が責任を全く果していないことにあります。

国が的確な指示を一斉に出せば、自治体ごとの温度差や連絡ミスの心配もありません。国は「風評被害」を招かないようにと、なるべく放射能による汚染を矮小化してとらえ、国民の安全を真剣に守る立場に立とうとしていないことが根底にあります。

国の対応を、汚染の危険があることを前提にしたものに抜本的に改めさせなければなりません(福島県産牛の出荷停止措置などの動きが出ている)。

食肉業界にくわしい獣医師は「解体しても目視では放射能の汚染は分からない。ただ、牛の場合は狂牛病の全頭検査を自治体が実施しており、解体した肉は、一時留め置かれている。これに併せて放射能の検査をすることは物理的にも可能だ」と話します。

少なくともモニタリング指定自治体(※)産の牛は、全頭調査を直ちに義務付け、さらに豚や鳥、魚類や農産物などの検査態勢を充実させていかなくてはなりません。

県と高知市は7月15日から、「モニタリング指定自治体」産、「国産」としか表示されていない牛肉を、量販店の店頭から数点購入し、放射能が含まれているかどうかの検査を始めましたが、月2回ほどのペースでしかなく、県民の不安に十分応えるものにはなっていません。

※福島県、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、東京都、神奈川県、千葉県、長野県、埼玉県、山梨県、静岡県の14都県(2011年7月24日 高知民報)