2011年7月3日

連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行」は本物か
I全数調査に強いこだわり

2009年8月27日、全国学テの結果を公表する中沢県教育長
尾ア県政の掲げた政策の重要な柱である全国学力・学習状況調査(以下全国学テ)の平均点を全国水準に引き上げるという課題は、政権交代という大きな変化に翻弄され、尾ア知事が就任後4回目となる2011年度調査は、東日本大震災の影響で実施されないことになった。

全国学テ結果を軸にしたPDCAサイクルで学校・教員・市町村教委を管理する県教委の手法は、肝心の総仕上げになって、とりわけ問題になってきた中学校の到達がはっきりしないという中途半端なものになってしまった。

2010年度の調査は民主党への政権交代の影響で、悉皆(全数)調査が取りやめとなり、調査対象を全国の3割程度の学校に絞っての調査となった。

この過程でも尾ア知事と県教育委員会は、あくまでも悉皆調査にこだわり続ける。

2009年10月26日、高知市内のホテルで開かれた四国4県の教育長が集まる会合で中沢卓史・高知県教育長は以下のような発言をしている。「悉皆調査を続けてほしい。国は抽出でよいかもしれないが、地方や学校は悉皆でなければPDCAサイクルがまわせない」。

2011年度の全国調査は、3月18日に東日本大震災の影響で延期されることが発表され、5月26日には文部科学省が中止を決定したが、尾ア知事は6月県議会に文部科学省が作成したテスト問題を使って高知県単独で調査を実施集計するための補正予算1300万円を計上。あくまでも全数調査にこだわり続けている。

この全数調査へのこだわりは、教職員組合のみならず、県下の小中学校の校長が入会し、県教育行政に従うことを旨とする県小中学校校長会(副田謙二会長)との間にまで摩擦を生じさせた。

6月20日、同会は調査実施の見送りなどを求める文書を県教委小中学校課に提出。翌21日には副田氏らが永野隆史・小中学校課長と面談している。

永野課長は「調査をやめてくれというような話ではなく、懸念する声も現場にあるので、きちんと説明してほしいというものだった。国の良質な問題を活用できるチャンスなので実施したいという県教委の考えを説明し、理解していただいた」と言うが、校長会が文書で県教委の中心課題に公然とクレームをつけることは異例であり、トップダウンによる調査への反発が学校現場に燻っていることは否定できない。

尾ア県政の全国学テ依存の強さは、全国学テ=悉皆調査という手法以外に、高知県の教育を前進させる方法論を持たないことの告白に他ならないだろう。

中沢県教育長は「4年以上やるべきではない」と自らの続投を否定している。教育は強引に引っ張っても思うようにできるものではない。高知県の教育を、強いトップダウンから、学校現場の力に依拠した方向へと舵を切るべき時に来ているのではないだろうか。(つづく))(2011年7月3日 高知民報)