旧春野町と高知信用金庫との念書を理由にして、高知市が3月末に同金庫第一センターの建物の固定資産税を半額に、土地の税額は建物が建つことで課税額が上がる分を半額にした(3年間)問題をめぐる高知市議会の反応と、高知新聞の記事は薄気味悪いほど奇怪なものだった。
この固定資産税の減額は法的根拠もないまま勝手に結ばれた念書を理由にして、本来高知市の歳入になるはずの莫大な税金(非公開なので税額は不明)を、議会にはかることなく専決処分で放棄したもので、6月3日の臨時議会に事後承認を求める議案が提出された。
まず議会側の反応。直近の3月議会では、検討委員会の結論が出ていないままの県市合築図書館関連予算の計上に多くの会派が強く抗議したのは記憶に新しい。今回は議会にもかけず執行したのであるから、比較にならない独断専行だが、どうしたことか共産党以外の口数は少なく、常任委員会の場で遺憾の意を多少口にした程度でしかなかった。
春野町との合併時には念書の問題点を厳しく指摘してきた自民党議員は、前春野町長と同じ会派を組んだためなのか、歯切れが悪いし、執行部の小さなミスでも激しく糾弾することで知られる議員の抵抗もまるでなかった。
噴飯ものだったのが臨時議会翌日の高新の報道。この記事には致命的な欠陥があった。最も中心的な事実が書かれていないのだ。
記事には「土地への税率を通常の1・5%から1・25%に軽減するなどの特例措置」と書かれていた。
建物の税額を半額にすることをよほど書きたくないのか。核心の事実を欠落させ、いかにも軽微な減額であるような印象操作で、まともな記事の体をなしてない。
さらに記事には本会議で下元博司議員(共産)が質疑に立ち「念書に法的根拠がない」、「(執行部が)3年以上も放置しており専決処分の条件には該当しない」などと問題点を指摘しているのだがその記述もない。一方で事後承認に賛成した公明、新風クラブのコメントは載せるというアンバランスさ。
そのために肝心の反対意見の内容が、読者には分からないというおかしな記事になっている。意見が対立する問題は、賛成・反対両論を紹介するという新聞記事の常道も無視だ。
岡崎市長が念書の処理を先送りしてきた理由は、固定資産税の引き上げや家庭ゴミ袋有料化を市民に求めようと地域住民に説明会をしている時期と重なったからであることは想像に難くない。
財政難を回避するために市民に負担増を求めている時に、儲けまくっている企業の豪華施設の税金を減額する、しかも旧春野町が勝手に結んだ念書を理由に。などということは、市長ならずとも言い出せない。その一方では信金の施設が完成し、約束の履行を迫られる。
ギリギリまで悩んだ挙げ句、選挙のドサクサに議会にかけない専決処分で突破することを選択したのではなかろうか。仮に執行部が3月議会に議案を出していれば、選挙前ということもあり、否決あるいは継続審議となり4月から減免はできなかった可能性も高い。
このような重大問題を、市政のチェック機関である議会も新聞も、まともに指摘することができず、当たり前の道理が通らないのは恐ろしい。相手が金融機関でなく一般企業であれば、このような対応がありえただろうか。高知市政は一体どこに向かおうとしているのだろうか。(N)(2011年6月19日 高知民報) |