2011年6月5日


連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行」は本物か 
E県勢浮揚なるか 産業振興計画

高知県政の至上命題である「低迷する県経済を4年間で上昇傾向に転ずる」ための尾ア正直知事の切り札は、産業振興計画の策定だった。

同計画は県内の各界・各層・各地域が共通の目的を持ち共に取り組める県勢浮揚の総合戦略(トータルプラン)で、「産業成長戦略」と県内7つのブロック単位で策定した「地域アクションプラン」からできている。

策定にあたっては市町村や団体の代表者、有識者等で構成される「産業振興計画検討委員会」と分野ごとの「専門部会」を置き、「地域アクションプラン」は、各ブロックの市町村や団体代表、住民代表で構成される策定委員会を設置して検討。官民協働型型で2008年度一杯をかけて膨大な労力を投入し
た。

08年2月22日、県議会2月定例会の議案提案理由説明で尾ア知事は「まず県経済の活性化により県勢を上昇傾向に転じさせるため、その指針となる産業別、地域別の振興計画を策定する」と明言し、6月6日には第1回産業振興計画検討委員会が開催。以後、県は膨大な人員とエネルギーを投入して計画づくりに没頭していく。

ここでの知事の主たる問題意識は、県内の産業には根深い構造的な問題があるため都道府県間競争に勝てないというもの。高知県の経済的困難をオールジャパンの問題としてとらえ、国の地方切り捨て、地域農林漁業破壊政策を転換させるよりも、固有の部分的問題を改善することを目指す観点が強調された。

計画策定の過程では県庁現場から「これまでの計画と同じものにしかならない。屋上屋」、「国の官僚は計画好き」など冷ややかな受け止めも少なからずあった。

08年12月10日の県議会12月定例会で「日本共産党と緑心会」の田頭文吾郎議員は県産業振興計画の中間とりまとめが示されたことに対し、本会議質問で以下のように評した。
 
田頭議員 各部会や全体会の開催など短期間での論議で、関係する職員の苦労は大変だったと思う。全般にわたって細部までの記載など、何とかしたいとの思いの労作で努力は評価する。

最終取りまとめを見なければ正確な評価はできないが、中間取りまとめの率直な感想は、長年にわたり進めてきた県政上各部門についての現状認識と問題点、それを克服するための課題が整理されているが、ほとんどが従来から繰り返し取り上げられてきたもので、新規でも表現を少し変えたものが多い。

もちろん、現在まで県勢浮揚のために各部署でそれぞれ努力してきたのであるから、現在の政治・経済状況のもとで特効薬的なものがあるはずはないし、同じような計画になるのは至極当然。今後の課題は、いかに県民が参加できる振興計画をつくることができるのか。産業経済の再生と振興、地域活性化への具体的な提言がなされるのかを期待する。

「これまでも努力が重ねられており、過去の計画と同じようなものになるのは当然」ではあるが、「課題を整理し、重点と方向性を県民や関連団体、市町村に示したことには意味がある」という観点で一定の評価している。

県民の切実な思いに触れながらボトムアップの要素も含んで作られた県産業振興計画は、限界はありながらも、結果としては国の流れとは一線を画するものにならざるを得ず、県民要求に添うものになっていると言うことができる。(つづく)(2011年6月5日 高知民報)