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高知追手前高校新館の空調室外機、35台も移設しなければならない |
高知県教育委員会が発注する校舎の耐震工事によって高額な保護者負担が生じる
という、公教育無償化の流れに逆行する不可解な現象が県下の県立高校現場でおきています。平成23年度に工事が始まる高知追手前高校では約220万円、須崎工業高校では30万円から50万円もの負担が発生する見込み。学校現場からは戸
惑いと批判の声がでています。
県教委の工事によってなぜ保護者負担が生じるのでしょうか。県下の県立高校にはPTA名義で大量のクーラーが設置されています。耐震工事にともない、これらのクーラーの室外機や配管を取り外し、再度設置しなければなりませんが、この費用をPTA側が負担しなければならないのです。
県立高校へのPTA名義のクーラー設置根拠は「県有施設の目的外使用」による許可。県教委総務福利課は取材に答えて「『県が実施する改修工事等で設置した設備が支障となる場合は、設置者で撤去・再設置を行う』との条件で目的外使用を認めている。追手前は室外機が35台と多いので金額が張るが、実際の契約ではもっと安く済むはず」としています。
今回の追手前の負担は新館工事分だけ。後年度には時計台のある本館工事も予定されており、さらなる費用負担が生じます。同校PTA(生徒数841人)では過去の余剰金を積み立てた基金を取り崩して対応するとしています。
基金がないPTAや生徒数の少ない高校の場合には支払いに困難が生じ、新たな負担金を徴収しなければならないことにもなりかねませんが、県教委の都合で決められる工事時に在校していたという理由で負担をしなければならないのも公平性の観点から問題があります。須崎工業(生徒数305人)では「負担をどうするかは、これからPTAと相談するが、新たに徴収することはしたくない」。
この問題は本来、公費で設置すべきクーラーを安易にPTA負担で置いてきた矛盾のあらわれといえます。今後は安芸高、清水高などで同様の事例が起こることが考えられますが、高等学校課は「実態は知らない。調べてみる」と関心は高くありません。
生徒の生命を守るため喫緊の課題である校舎耐震工事を迅速に進めるためにも、目的外使用許可の更新時には許可条件を改め、クーラー移転費は県教委が工事経費に含めて負担する方向に転換すること、さらには数多くあるPTA負担のクーラーを公設に切り換えていく方向性を示していくことが求められます。(2011年5月15日 高知民報) |