2011年5月15日
連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行」は本物か B初の県議会で核廃処分場誘致を否定

初の県議会に臨む尾ア知事。、隣は中西穂高副知事2007年12月12日)
尾ア正直・高知県知事は知事に当選してからわずか17日間後の2007年12月12日、初の県議会に臨む。この議会では県政の基本姿勢を問う質問が交わされた。

議会冒頭、尾崎知事はやや固い表情で「選挙の結果4年間の県政の舵取りを担うことになった。期待と責任の重さを痛感し、身の引き締まる思い」と切り出し、「橋本知事が残した素晴らしい財産をしっかり引き継ぐとともに、今の高知県に必要だと信じる新しい取り組みに、これまでの経験を生かしながら若さと行動力で敢然と挑戦していく」と、4年の任期中に県勢を上向きに転じ、過疎と高齢化にあえぐ高知県の窮状を何とかしなければならないという決意を、悲壮感さえ漂わせながら語気を強めて述べた。

代表質問トップは、タカ派で知られる自民党の三石文隆議員で、いきなり「自主憲法制定についてどう考えるか」というイデオロギー色の濃い質問をぶつけたが、尾ア知事の答弁は「地方自治の充実につながるように発言していく」と、微妙にかわしたものだった。

日本共産党の田頭文吾郎議員は当時高知県内で大問題になっていた高レベル放射性廃棄物最終処分場についての態度を問い、以下のようなやりとりがあった。
 
田頭議員 本県ではここ数年、各地で放射性廃棄物関連施設の誘致の動きがあった。こうした施設は知事の目指す高知県活力振興計画と一致する方向と考えるのか。きっぱり拒否の姿勢を示すべきだ。地方を財政的に窮地に追い込み、調査に応募したら10億円もの交付金を出す「札束で頬をたたく」国の手法は許されない。

県知事 放射性廃棄物処分場問題は避けて通ることのできない国民的課題。ただ安全性については様々な議論があり、まず国が充分国民に説明する義務がある。こうした施設の受け入れは、まずは住民の判断が大切だが、私としては環境立県や滞在型・体験型観光の推進という考えから風評被害が懸念される中、放射性廃棄物処分場の誘致については否定的な考えを持っている。きびしい市町村の財政状況を背景に、多額の交付金で住民の意思形成に影響を与える手法には疑問を感じる。

田頭議員 否定的な立場であるならば、はっきりと「高知県にはいらない」と反対の立場を明確にすることが大事だ。

県知事 風評被害が懸念される限りにおいて私は否定的だ。他の施設についても同様の状況にあるなら否定的だ。懸念がないというのであれば、国はしっかり説明責任を果たすべきだ。

尾ア知事の答弁からは、同処分場が原発から出る使用済核燃料を再処理してプルトニウムを取り出す「核燃料サイクル」と一体不可分であることへの認識の乏しさ、処分場誘致にむけ活発に動いていた自民党国会議員の手前もあってか、「反対」とは明言しなかったものの、実質的には原子力関連施設の誘致は許さないという態度を明らかにした。

このように、尾ア知事の初めての県議会は、尾ア県政が日本共産党を除いたオール与党に担がれ、誕生時からとりわけ自民党の影響を色濃く受けてはいるものの、重要な部分で県民の声に押され、自民党の言いなりにはならず、橋本前県政での積極面を踏襲する側面があるという、県政の二面性を県民の前に示すことになった。(つづく)(2011年5月15日 高知民報)