2011年4月24日

新連載 尾崎県政の4年間 「対話と実行」は本物か @批判とどう向きあうか

県議選結果についてコメントする尾崎知事(4月11日)
4年目を迎えた尾崎正直高知県知事(44)。この間の尾崎県政の特徴について、取材で得た情報を用い連載形式で紹介していく。

県議選の開票翌日2011年4月11日。尾崎知事は県議選の結果について報道各社の取材を受けて以下のように述べた。

「現政権、民主党に対する厳しい見方が全国的な選挙結果に出ている。高知でも同じ傾向だ」と感想を述べ、新たな県議会の会派との関係については「今まで与党で指導をいただいた皆様との信頼関係を維持していきたい。信頼関係があるからこそ活発な政策議論ができる。前向きな建設的な関係をますます発展させていきたい」。さらに民主党との関係については「国政のあり方を高知県としてこれまで通り政策提言していく。民主党県連とも信頼関係を維持しつつ、活発な政策論議をしていく」。

その一方で「唯一の野党の共産党が公認候補を伸ばしたが」との記者の問いには「現状維持ということではないか。得票数はどうだったのか(減っているのではないかとの意味)」と素っ気なかった。

尾崎知事はこの日に限らず、与党会派との信頼関係を大事にするという趣旨の発言を繰り返してきた。政治家である知事にとり与党会派との関係を大事にすることは言うまでもないだろう。だが、同時に全県民を代表する知事として、与党との信頼は必要でも野党とは必要ないかのような狭い考えでは県政トップとしてのの見識を疑われかねない。

県議会の使命は知事をチェックすることであり、与党だろうが、野党だろうが、政策論議をして是々非々の対応をするのが当たり前であり、与党だから何でも賛成、野党だから何でも反対では責任は果たせない。

高知県政を揺るがした同和行政の歪み、破綻した高知医療センターのPFI契約についても、県議会では少数野党であった日本共産党だけしか問題点を指摘してこなかったのは動かしようのない事実である。誤りなく県政運営の舵取りをするには、与党のみならず、野党とどう向き合っていくのか、立場を異にする批判者との信頼構築こそが大事になる。

その意味では尾崎知事の共産党を除く「オール与党」しか眼中にないような政治的感覚はいかにも古くさい。ここが橋本前県政との最大の相違点とも言え、県民に広がりつつある「知事は何を言っても耳を貸さない」という批判とも重なる尾崎県政の弱点と言わなければならない。

この背景には中央官僚出身の尾崎知事は、橋本大二郎前知事と違って個人的な人気に乏しく、確たる支持基盤も持たないが故に、次の選挙を考えた時、県議会最大勢力である自民党への気遣いが避けられないという「お家の事情」が見て取れる。

4月4日、尾崎知事は全職員に向けて「仕事初め」の講話をした。そこでは「県民から批判を受けることは貴重。私たちが間違っていることもある。批判を生かしていかなければならない」と県民からの批判に真摯に耳を傾けることが強調され、さらに「尾崎が間違っていると思った時には、それは知事違うよと意見してほしい。私の過ちをただしてほしい」と職員に繰り返し呼びかけた。

この発言は、県立・高知市民図書館合築の過程で基本構想検討委員会の結論を待たず予算を計上した乱暴な手続きに対する県民の批判が念頭にあることは明らかだが、本気で知事が批判に耳を傾けるというのであれば、まずは県民が選挙で選んだ県議会、とりわけ耳の痛いことも指摘する野党とこそ、しっかり向き合い議論する腹を固めることが求められるのではないだろうか。(つづく)(2011年4月24日 高知民報)