2011年4月17日

コラムアンテナ 東北から我々が学ぶことは

各層から参加があった新時代の図書館をつくる高知の会結成総会
東日本大震災の想像を絶する被害を目の当たりにし、高知県を遠くないうちに必ず襲う南海地震でどういうことが起きるのかを実感を持って考えるようになった。今まで、いくら言葉では知っていても、どこか遠くで聞いていた。

阪神大震災は都市の直下型地震で、強烈な揺れによる建物倒壊の被害が大きかったが、今回の東北の地震は海中で起きるプレート型。津波の恐怖をまざまざと思い知らされた。

南海地震は東北と同じプレート型であり、今回の惨事から我々が学ばなければならないことは無数にある。

加えて南海地震には特有の問題がある。

まず南海地震は震源域が東北より、はるかに陸地に近く、ほとんど直下型といってよいほど。そのため強い揺れがあり、さらに津波襲来までの時間も短い。

そして声を大にして言わなければならないのが、震災の直後から被災者救援の拠点として役割を果たすべき県都・高知市の脆弱性である。

高知市中心部は地震で瞬時に最大2メートル近い地盤沈降を起こすことが想定されている。するとどうなるか。決壊した堤防から浦戸湾の海水が中心街に流れ込んでくると考えておかなければならない。さらにその上を津波が襲う。

南海地震で高知市の様相は一変する。高知県は13万人もの市民が住居を失い長期避難をしなければならないというシミュレーションをたてている。強い揺れ、浸水、津波という三重苦にさらされる現実が高知市には突き付けられているのである。

救援の司令塔であるべき県庁や高知市役所も浸水予想エリア内にある。高知医療センターは高台にあるので残るだろうが、下知や高須地区の水没で孤立する可能性が高い。高知日赤病院や近森病院など中心部の拠点病院も被害は免れないし、高知東・南消防署が水に沈むのは確実だ。地盤沈降による浸水が避難を困難にし、救援活動を妨げることは火を見るよりあきらかである。

さらに他の地域から救援物資や人員を受け入れるインフラを考えると、高知空港は物部川河口に位置し、仙台空港の二の舞になることを想像するのは難くない。東西に長く続く海岸線の国道が寸断されることは確実で、頼みの高速道路も高架が一つでも落ちれば万事休す。港は水没と液状化で使い物にならず、陸の孤島と化し、被災後、相当長期間に渡って物資や人員が入ってこない状況が生まれかねないことも覚悟しておかねばならない。

東洋町から宿毛までの長い海岸線が一網打尽に津波の被害を受け、県都はズタズタ、頼みの支援ルートも断たれるという、全国的にもたぐいまれなシビアな状況に高知県は追い込まれる可能性がある。

故に研究者は懸命に警鐘を鳴らしているが、その危機感が県民に共有されているとは言い難い。後追い対策ばかりで、本当の危険性を分かるまで住民に伝えようとしない行政の姿勢にも問題は多いと言わねばならない。真剣に県民の命と安全を守る立場で、従来の延長線上ではない、生活のあり方やまちづくり全体も含め、真剣に考える時が来ている。この機を逃してはならない。(N)(2011年4月17日 高知民報)