2011年3月20日

コラムアンテナ 「最悪の原発事故 伊方プルサーマル即時中止を」

伊方原発、左から1.2、3号機。3号機ではプルサーマル発電をしている
3月11日に発生した東日本大震災により、放射能を大気中に大量に放出し、炉心溶解・爆発を起こした福島第一原発。言葉を失う前代未聞の事故は、これを書いている15日には最悪の事態を迎えつつある。

これまで電力会社・政府・政権党が言い続けてきた、どんな地震がきても安全であるという多重防護、核分裂を「止める」、燃料を「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」は機能しなかった。

四国電力・伊方原発のウェブサイトにはこう書いてある。「原子力発電所の
安全上重要なことは、発生する放射性物質を確実に管理し、いかなる場合もこれを閉じ込め、発電所周辺の環境・人々に影響を及ぼさないこと。万一の事故の場合でも、放射性物質の環境への異常な放出を防ぐことです」。

今回の事故では会見する枝野幸男・官房長官が、いとも簡単に「ベントした」だの、「管理下において微量の放射性物質を放出」などと放射性物質を環境中に出すことを当然のように言い、NHKをはじめとするテレビもそれを鵜呑みにする放送を繰り返していた。

いかなる場合においても放射性物質は外に出してはいけないのであって、タブーを犯すしかないところまで事態が深刻であることのあらわれだ。炉内の圧力が高まり原子炉そのものが破裂して広範囲に飛び散るよりも、大気中に小出しにするほうが、マシだろうという「究極の選択」であり、危険きわまりないことが進行しているのである。

冷却水がなくなり燃料棒が露出して、炉心が溶解したということは、再び臨
界が起こりかねない状態である。炉への海水注入は、放置すれば最悪の事態になることは時間の問題なので、結果がどうなろうとも他に打つ手がない中での、一か八かのギリギリの選択だ。原子炉の中が実際にどういう状態なのかは、誰にも分からない。

その危うさは、原子力保安院や政府の会見時の異様な表情、視線の泳ぎ方、肝心なことは何も言わないことからも読み取れる。

13日になり冷却水が抜け、燃料棒が3メートル近く露出した第3号機は、プルトニウムをウランと混ぜたMOX(モックス)燃料を使うプルサーマル発電を昨年秋から開始している原子炉である。プルサーマルは「灯油ストーブにガソリンを入れる」と言われる危険な発電で、原子炉内での核分裂の制御が難しく、融点が下がることにより燃料溶融事故を起こしやすい極めてハイリスクなものだ。その3号機で燃料棒が露出する事態をきちんと認識する必要がある。四国電力の伊方原発3号機でも2010年からプルサーマル発電をはじめている。

今回の事故の最大の教訓は、地震国日本で原子力発電に依存する政策は誤りであるということ。原発が温暖化防止の切り札であるクリーンエネルギーであるかのような方便はもう通用しない。電気自動車も電化住宅も、もとをたどれば原発を使うわけで、まったクリーンなどとはいえない。

老朽化した炉をさらに使わせているう安全基準の総点検、原発依存からの脱却、プルサーマル発電と核燃料サイクルの即時中止、代替エネルギー開発とともに、もっと電力を使わずに生活する社会へとシフトしていくことを真剣に考える時期にきている。(N)(2011年3月20日 高知民報)