2011年3月13日

コラムアンテナ 「どこかズレてる高知市の分煙対策」

これが「分煙」? 高知市役所
2003年に制定された健康増進法により、受動喫煙を防ぐ観点から公共的施設での喫煙を認めない方向が年々強まる中、高知市は2月1日から「歩きたばこ防止条例」を施行。中心市街地に定める禁止区域内では指定場所以外での灰皿を持参しない喫煙は認められないことになった。

携帯灰皿を持って立ち止まりさえすれば、どこでも吸えるという、受動喫煙対策からみれば十分とはいえない内容であるが、ともかく市民の喫煙に一定の規制をかけるものとなっている。

ところが2月になり、市役所内で喫煙に関して奇妙なことがあった。議会棟の廊下の一角に「分煙」と称し、床に赤いガムテープを貼り、このテープの枠内で喫煙するよう求める掲示が登場したのである。

分煙とは、言うまでもなく受動喫煙防止が目的で、外部に煙が流れ出ない対策をとった喫煙場所を指定し、その場所以外での喫煙を禁じるものだ。廊下の床にテープを貼っただけでは、頭上に換気扇があるからといって、これを分煙とは普通は言わない。

さらにおかしいのは議会棟のこの場所は、市が定めた喫煙指定場所ではないこと。指定場所以外は禁煙という庁舎管理を逸脱し、議員たちが勝手に喫煙場所にしているという不可解な現象がある。

受動喫煙対策を受け持つ人事課と議会事務局に事情を聞くと、「確かにあの場所は指定場所ではない。分煙としても不十分だと思うが、やらないよりまし。少しでも意識付けになれば」と、ここで喫煙する議員や幹部職員に遠慮してか、奥歯にものが挟まったような切れの悪い答えだった。

この場所は、議会開会中の休憩時間には、議場から出てきた議員と幹部職員が一斉に煙草に火を付け、もうもうと煙が充満する一種の「無法地帯」で、確かにそのような状態よりは、テープ枠内で吸う方がマシと言えなくもない。

しかし、市民に喫煙規制をかける条例をつくった議会と幹部職員が、指定場所以外禁煙という約束を堂々と無視し、さらにそれを追認するような赤テープは、やはり納得がいかない。

実は本庁舎内で喫煙指定場所ではないにもかかわらず、喫煙が黙認されている場所が、他にもあった。その一つはY副市長室で「副市長が喫煙指定場所まで行くわけにもいかない」などという意味不明の理由で、室内での喫煙が見て見ぬふりをされている。

もう一つは市政記者クラブが使っている記者室。各社の机の上の灰皿の山盛りの吸い殻、狭い室内はじっとりとヤニ臭く、まるで「昭和」の風景だ。市政を担当したことがある女性記者は、案の定「他の男性記者がみんな吸うのでやめてくれとはとても言えなかった」と話す。

2010年2月には厚生労働省が通達を出し、市庁舎など公共的施設を原則全面禁煙とし、どうしてもできない場合に限り、しっかりした対策をとって当面分煙しながら完全禁煙をめざすことが自治体に義務付けられていることを彼らはどこまで理解しているのだろうか。

市民には条例で喫煙規制をかけながら、議員・副市長・マスコミという「特権階級」であれば勝手が許されてよいはずがない。率先垂範。この程度のこともできずして、市政をあれこれ言う資格はない。(N)(2011年3月13日 高知民報)