|
合築案を懸念する意見が多数出された高知市のでのフォーラム(2月12日) |
2月12日、高知県と高知市が主催して合築図書館構想への住民の意見を聞く「新図書館フォーラム」が高知市の高知城ホールで開かれ15人が発言。図書館部分について意見を述べた12人のうち8人が合築案に反対意見や懸念を表明。4人が合築に賛成する意見を述べました。
合築案に賛成する意見は、同小跡地に高知大学のキャンパスを移転させようと動いてきた土佐経済同友会に所属する建設業関係者の発言が目立ち、建物にとどまらず、運営組織も県・高知市を一体化していくことを求める声が特徴的でした。
合築に反対・懸念を表明する意見では、「新時代の図書館をつくる会」で活動しているメンバーとともに、元高知市民図書館長、緑化ボランティアに携わる市民などが発言。追手前小跡地に大きな建物を建てるのではなく高知市民図書館本館と点字図書館にとどめて市民の憩いの場としてゆとりある空間にすること、知事・高知市長のトップダウンよる拙速な手法への批判、高額な費用がかかる駐車場整備は不要であるなどという意見が出されました。
また、合築案を単独整備した場合との比較資料に、シキボウ跡地の土地購入費を記載していることについて、新たな負担が必要であるかのような記述をしていることは誘導的で間違っているという指摘もありました。
こども科学館については3人が発言。NPO法人四国自然史科学研究センターの谷地森秀二氏が、生物標本の収蔵保管設備、4トントラックが入るような資料搬入口、燻蒸施設、3トンの荷重に耐える大容量エレベーター、多様で充実した展示を求めました。11日には四万十市、13日には安芸市でも同様のフォーラムが開かれました。
主な発言内容
益善一(元高知市職員) 合築は考え直すべき。この場所に新図書館を建設することには反対だ。すばらしい歴史を持つ追手前小跡地を鉄とセメントの構造物で固めるのではなく、多くの空間を残した市民のオアシスにしてほしい。市民図書館と点字図書館にとどめ、県立と科学館は他に適地を探すべきだ。町中に駐車場は望ましくない。そもそも大駐車場を必要とするのは県立。市民図書館だけなら小規模ですむ。駐車場はいらないという意見もあるが、高知県の交通事情を考えた時、車の利用を考えない県立はあり得ないが、日曜市・中の橋の交通事情を考えると多くの車が出入りする駐車場をつくるのは、無理な場所だ。県立図書館の立地には向かない。お城の景観を考えなければならないが、点字・科学館を併設してそれぞれに十分なスペースはとれるのか。キチキチの寄せ木細工では夢がない。貴重資料は分散して保存すべきだ。
千頭邦夫(チカミミルテック代表取締役社長、センプラン研究所) 追手前小の卒業生だが、時代時代の要請で機能が変わっていくのは当然のことなので、新施設の整備には大いに賛成。東京でいえば一つの区にも満たないような規模の高知県に同じような機能を持った施設が重複して必要なのか。合築は大変プラスの方向だ。市民図書館も県立図書館も機能はほとんど重複している。機能がほとんど同じであるなら統合すべき。もし違うのであれば別々の場所に設置するのはナンセンス。利用者は別々の場所に行かなければならない。一カ所ですべての機能を果たするのが県下一円の県民にとって最も望ましい。従って機能がほとんど同じでも違っていても合築が正しい。
渡辺進(元高知市民図書館長) 最も大切なのは次世代にどう宝を残すのかということ。事務局の説明は総花的で図書館をつくるのに当然のことを言っているに過ぎない。中長期の振興計画に基づいて図書館を作っていくのが王道。拙速は賢明な人が選ぶ方策ではない。実現するプロセスが抜けている。施策を実行する担保を。 進化型図書館というが、あの場所でフレキシビリティが持てるのか。50年後を見すえたゆとりある計画を。
吉岡太史(高校教員) 中間報告の「努める」、「点字図書館と連携して」などの書きぶりからして、新図書館は障害者サービス充実について消極的、主体性に欠ける。著作権法が改正され、公共図書館が果たす障害者サービス充実の実践が全国で始まっている。もっと明確に打ち出すことが公共図書館の役割として重要だ。検討委員会の議論ではこの点が不十分だった。限られたスペースでハンディキャップを持ったものに不自由でない施設が可能なのか。
山本忠智(元小学校校長) 合築で18億円安くなると宣伝すれば、賛成が増えるのは当たり前。面積が広がり駐車場に10億円かけるなら安くなるというのはでたらめだ。ごまかしの背景には合併特例債ありきがある。合築構想が浮上したのは、わずか半年前の知事・高知市長のトップ会談。県民市民に問う余裕もなく結論を急いでいる。検討委員会でさえ単独か合築かの両論併記が主流となり、追手前小跡地を適地でないという委員が約三分の一もいる。
漁師明(建設コンサルタント) 人が集まりやすい中心市街地にこのような施設ができることに期待する。合築によりワンストップ化が推進され、一つの図書館で最高レベルのサービスが受けられるのはありがたい。県立は本来は市町村立図書館、学校図書館の活性化のために支援していくのが一番の機能だということを報道で知った。今まで県立も貸出にかなりの人役をさかれていたが、その部分を県の図書も併せて市民図書館に分担できるということであれば、県の人的財産を市町村や学校支援に集中に使える。県が永国寺にすすめている産学官連携センターと連携することでさらなる相乗効果が生まれることを期待する。
中田昌志(緑化ボランティア) 現計画には反対。高層になっているが、植樹計画がない。自然と一体になった建物にしてほしい。追手筋には立派なクスノキがある。クスノキより高い建物は建てない。自然環境を良くして防災にもつながる。建物は城下町なので和風を考えてほしい。駐車場は不要。特に地下は不要だ。災害時など問題がある。費用を10億円見積もっているが、1台あたり1000万円。そんな駐車場をつくる必要はない。(2011年2月20日 高知民報) |