「人権と民主主義・教育と自治を守る県共闘会議」(県人権共闘、窪田充治議長)は1月19日、高知市の同和行政のあり方について同市民協働部、健康福祉部と話し合いを持ち、市が「市民会館」=隣保館が今日所持している壬申戸籍(※)の現代版につながりかねないリストを用い、収入や生活保護受給状況について市民全体と比較調査を実施したことを批判しました。
この調査は2009年9月、当時の同和・人権啓発課が実施したもので、「市民会館」が旧同和関係者の名簿一覧である「世帯票」をベースに、記載されている市民一人一人の住民基本台帳ネットワークシステムの住民票コードを新たに書き込んだリストを作成。
同課は各市民会館からリストを集約して、市役所内部の操作で税情報、生活保護情報とを電算処理でマッチング。「同和関係者」と高知市全体とを「比較調査」して、収入が8割、生活保護受給率が3倍であるという数字をはじきだし、「なお取り組むべき課題は残されている」と「同和行政」を継続させる根拠にしています。
しかし、この「比較調査」の内実はいい加減なものでしかありません。
高知市の同和行政は「属地属人主義」に縛られているため、「比較調査」の対象になっている関係者は、旧同和地区の線引き内に住む少数の者のみ。
そもそも「部落民」=関係者の定義があいまいですが、線引き内しか視野に入れていない調査では、地区外に転居することが多い若い世代を含めた実態は反映されず、結果的に収入が低い高齢者ばかりが残される構図に。比較の手法としてはまったく非科学的です。このような「比較調査」を唯一の根拠に、あくまでも同和行政に固執する高知市の時代錯誤ぶりが浮き彫りになっています。
同和行政の根拠法が失効した今日も、現代版「壬申戸籍」につながる世帯票を「市民会館」が所持し続け手居ること自体が大きな問題ですが、さらに住民票コードまで記載したリストまで市が新たに作成していることには、県人権共闘側から「いつまで行政が市民を被差別者扱いするのか。プライバシー侵害だ。行政は市民に線引きをしてはならない」という厳しい指摘がありました。
今西恵子・市人権・同和男女共同参画課長の話 個人名は特定できないようにやっている。あくまでも三年に一度、同和行政の見直しのためにする調査であり問題ない。
※明治時代に作られた戸籍。「新平民」など旧身分について記載があり、身元調べに使われていたことから、1960年代に部落解放同盟が閲覧禁止闘争を展開し法務省に閲覧を中止させた。(2011年1月30日 高知民報)
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