高知県立図書館と高知市立高知市民図書館本館を追手前小学校跡地で一体的整備をする計画が進行していることに関連して、県下唯一の視覚障害者への情報提供施設である高知市立点字図書館(公文義明館長)を新図書館と同じ建物に移転する計画を策定する「新点字図書館基本構想検討委員会」第2回目委員会が1月13日、高知市総合あんしんセンターで開かれました。この日の委員会には県がオブザーバーではなく正式に参加しました。
冒頭、小田切泰禎・県地域福祉部長が「新しい点字図書館では福祉部門との連携を強化して視覚障害者への情報提供施設としてさらに充実させていければと考えている。委員のみなさんには、これからの点字図書館の進むべき方向性を提示してほしい」とあいさつし、委員に尾崎正直知事からの委嘱状を手渡しました(新たに吉野由美子・元高知女子大准教授が委員に加わった)。
県はこれまで同点字図書館が全県の視覚障害者を対象にしたサービスを展開しているにもかかわらず、高知市立の施設であるとして、関心が低く支援策も冷淡なものでしたが、今回当事者として委員会に加わったことは、視覚障害者施策の今後にとって一歩前進といえます。
小田切部長は「点字図書館は高知市立ではあるが、これまでも県下の視覚障害者を対象に役割を果たしてきた。これからも市立であるということは変わらないが、県の支援策を考えていくために改めて県として正式に委員会に加わることにした」とコメントしました。
この日の討議では、新しい点字図書館の位置付けについての本質的な意見が出されましたが、市健康福祉部は「図書館本体の結論が出ようとしている時に、そこまで戻る議論は期限的に無理。あくまでも今の点字図書館の延長で考えている(藤原好幸・福祉事務所長)」と述べ、議論の封印を求めました。また委員から、点字図書館が現在の活動で最も重点を置いている点字・録音図書の作成を、ボランティア任せにしてで館の責務として明確に位置付けていない高知市の認識に強い批判があがりました。
解説 現在、点字図書館は高知市健康福祉部内に置かれていますが、福祉的な点が十分とはいえない現状があることから、議論の論点として、@視覚障害者への図書を中心とする情報提供サービスは本来公共図書館が担うべき役割であり、点字図書館は公共図書館の一部として役割を果たすべきであるとする主張、A視覚障害者への情報提供施設として生活支援にも重きをおく施設にすべきであるという方向の意見が委員から出されましたが、「もう日程的に無理なので、そこまでの議論はできない。従来の延長線で行く」というのが高知市の結論でした。
しかし、この日の委員会はまだ2回目。始まってからわずか1カ月半しか経っていません。にもかかわらず、点字図書館のあり方を問う根本的な議論もできないスケジュールでは、いったい何のための委員会なのでしょうか。まともに議論するつもりなど初めからないという本音が露呈しており、正式に参加した県の責任も問われます。合併特例債の期限に引きずられ、議論できないままの駆け込みになるという懸念が現実のものになりつつあります。(N)(2011年1月23日 高知民報) |