高知県立図書館と高知市民図書館本館を追手前小跡地で統合して一体的整備をする基本構想の策定をめざす「新図書館基本構想検討委員会」が12月7日に第3回目の会合を開き、かねてから問題点が指摘されていた利用者用の駐車場プランを提示したが、県市が合築の理由にしていた論拠が崩れ、迷走し始めている印象を持った。
一体的整備の最大のメリットはいうまでもなく建築費・運営費の削減。8月20日に県市が公表した「ワーキンググループ」報告書は建設費約18億円、年間運営費1億1000万円を削減できると胸を張っていた。
しかし、このコスト計算には、法で定められている台数以上の駐車場の建設・運営経費は入っていない。
現在ある県立、高知市民図書館本館には駐車場が皆無に等しいため、県市には新図書館に駐車場を整備する発想はなかったのだ。秋頃に、県教委の幹部が「駐車場は今もないのだから、なくても大したことではない」と話していたことを鮮明に覚えている。
要するに都市型図書館なのだから駐車場不要。駐車場を作らないことを前提にしたからこそ、追手前小跡地を用地に選定したともいえる。
しかし、「駐車場がない図書館などあり得ない」という強い批判が議会や新図書館検討委で出され、追い込まれた形で駐車場案を出ざるをえなくなったのがこれまでの流れである。
今回示されたのは@ピロティ案(60台)、A地下自走式案(100台)、B地下機械式(100台)だが、どれも問題が多い。
まずコスト。県市は駐車場を整備することにより増える建設費について、現時点で示してはいないが、地下の場合は安くても1台1000万円が相場。5億円や10億円の建設費は簡単に増える。
これでは18億円のコスト削減は成り立たないし、同時進行で検討が進みプラネタリウムや最新機器設置など膨れあがる気配を見せる「こども科学館」の建築費を考えれば、削減効果は雲散霧消する。
ピロティとは大型電気店によくある一階部分を持ち上げて駐車スペースにするものだが、本を階上に数百万冊も保管する図書館には向かない。新図書館が想定する免震構造との関わりも不安だ。
地上6階建てになってしまうことは致命的ともいえ、高知市が力を入れる「お城がみえるまちづくり」のための28メートル高度規制と矛盾してしまう。規制区域は追手筋をはさんだ追手前高校側までで、追手前小側は規制の範囲外であるのだが、道1本を隔て県市が建てる建築物が高度規制を無視して景観を破壊したとなれば県民的批判が巻き起こることは必至。県教委も「規制区域ではないが配慮する」と述べている。
図書館建築専門家である植松貞夫・筑波大教授によると「図書館は階高を大くとる必要があり、通常の建物より高くなる」。つまり4〜5階が限度であり、階数が増えるピロティは難しい。
地下方式は建設費増大に加えて、特に機械式では運営経費やメンテナンスの経費もかかる上、浸水すれば大変なことになる。車の出し入れ時の手間など利用者の利便性が下がるのも難点で、日曜市や周辺道路の一方通行規制で慢性的に渋滞が発生するエリアに適した工法とは到底思えない。
想定外の駐車場、大義であるコストメリットがなくては、何のための追手前小跡地への図書館合築か。県市トップには今一度、大所高所から、勇気をもった判断を求めたい。(N)(2010年12月19日 高知民報) |