2010年12月12日

これでいいのか新点字図書館 第1回検討委 あまりに短い審議日程 枠ありきに委員猛反発

高知県立図書館と高知市立高知市民図書館本館を追手前小学校跡地で一体的に整備する計画がすすんでいることに関連して、視覚障害者への情報提供施設である高知市立点字図書館(公文義明館長)を新図書館と同じ建物に移転する計画を策定する「新点字図書館基本構想検討委員会」の第1回目の会議が11月30日、高知市総合あんしんセンターで開かれました。

審議スケジュールは極めて短期間で1月下旬に原案をとりまとめ、2月にはパブリックコメント、来年3月には計画を決めなければなりません。

同館は県下唯一の視覚障害者情報提供施設ですが、今年1月からの著作権法改正によって今後は視覚障害だけでなく、様々な読書障害を持つ県民への情報提供サービスを、公共図書館と連携しながら提供していく中核施設としての役割が強く求められています。

しかし、同図書館を所管する高知市健康福祉部の問題意識は従来の延長線上のものでしかなく、様々な障害種への対応は「これからの検討課題」(藤原好幸同市福祉事務所長)というにとどまっています。このような状況下での、あまりに短期間の検討スケジュールには関係者から不安の声が上がっています。

検討委員のメンバー(敬称略) 委員長=加藤秋美(元県立若草養護校長)、副委員長=上田健作(高知大人文学部教授)、委員=別府あかね(視覚障害者生活訓練指導員)、正岡光雄(県視力障害者の生活と権利を守る会副会長)、松岡弘(県視力障害者協会会長)、松田光代(高知朗読奉仕者友の会会長)、鈴木孝典(高知女子大講師)、鎮西康子(高知ブライユの会代表)、小野川芳美(元県立盲学校教頭)

解説 この日の委員会の議論で重要なポイントとなったのが、新点字図書館の床面積の「枠」について。討議の中で、高知市幹部が床面積を「現状の倍程度」と発言したことに委員が猛反発しました。

「すでに計画ができているのか。決まっているのであれば検討する意味がない」、「何を入れるのかが分からなければ面積はでない。枠だけを先に作ってもうまくいかない。著作権改正で対象が増える。本当に倍でいいのか」などの指摘が相次ぎ、同委員会の総意として、「面積にとらわれず、必要な機能を話し合う」ことを確認。高知市側も「倍というのはひとつの例示、仮の話だ。決めているわけではない」と述べました。

しかし、実際には同時併行で検討がすすめられている「子ども科学館」と約3000平方メートルを分け合って、最大「倍程度」しか点字図書館側に割り当てがないのは既定路線。

高知市健康福祉部が中心となった作業部会が年末年始に作成する次回検討委(来年1月13日)への提出資料で大方の全体像が示されることになり、委員会審議は形式的なものにしかならないことは目に見えています。

読書に障害を持つ県民への情報提供という切実で重要なサービスの中核を担う施設の整備が、合併特例債の期限に駆け込ませるため、まともな議論もないまま決められていくことがまかり通るのも、これまでの高知市・高知県行政の点字図書館への関心の低さの反映であるといえます。(N)(2010年12月12日 高知民報)