2010年12月5日

県教育長が合築ありき強調し軌道修正 新図書館第2回検討委 「市民」機能低下への懸念根深く 

休日に開催された第2回検討委(11月23日、高知市役所)
高知県立図書館と高知市民図書館本館の一部機能を追手前小跡地で統合して一体的に整備する基本構想を策定する「新図書館基本構想検討委員会」は11月23日に第2回目の会合を高知市たかじょう庁舎で開きましたが、中沢卓史・県教育長が会議の冒頭、「検討委の目的は追手前小跡地に合築で整備する新図書館の基本構想をまとめること」と釘を刺し、露骨に合築ありきの方針を強調する場面がありました。

中沢県教育長のこの発言は前回(10月30日)の会合で、合築案への反対意見が噴出したことから、県市が想定する合築を前提にした話へ強引に軌道修正したもの。このため各委員の発言のトーンは前回と異なるものになりましたが、依然合築への懸念は払拭されないままでした。

一方で「県市の線引きを残す意味があるのか」、「完全統合すべき」という趣旨の意見も目立ち、筒井秀一・高知市民図書館長は「現時点では県市には異なる役割があるという整理であり、今のところそれぞれの図書館は存続する。本の所属が県市どちらかという本籍はあるが、現住所は同じなので利用者には区別されない」などと述べ、将来の完全統合を否定しませんでした。

障害者団体の関係委員から出た視力障害者へのヒアリングの要望について、県市の事務局は検討する前向きな姿勢を示しましたが、そうであれば一般の図書館利用者や高校生の声も委員が直接聞く必要があるのは当然。にもかかわらず2月上旬に中間報告を取りまとめなければならない「出口」が決まっていることから、困難が予想されます。

また、委員から出された意見を事務局が引きとって聞き置くだけで、委員同士で意見を交わし、検討案を練り上げていくこととは程遠いのが会議の実態。短期間のスケジュールの弊害があらわれています。

第2回検討委員会での発言内容
左上から中沢県教育長、吉沢委員、植松委員、斉藤委員、篠森委員、内田委員

中沢県教育長 本検討委の目的をもう一度確認するが、新しい図書館の基本構想を検討して取りまとめること。その基本構想とは追手前小跡地に合築で整備する図書館の基本構想だ。合築によって機能に支障が出るものがあるかについて議論して、合築という方法が否定されれば話は別だが、合築で整備する新図書館の基本構想をとりまとめていただくもの。

吉沢文治郎委員 高知県の図書館の現状は非常にとんでもない状況。日本一の図書館をめざす覚悟が行政になければろくなものができない。合築して運営費を1億1000万円浮かして、図書費を2000万円台から5000万円に増やすと言った段階でヘナヘナヘナ。その程度の覚悟か。図書費を1億円増やすくらいの覚悟が行政にないと議論の意味がない。全国で最近作られた図書館で駐車場は100台ない図書館はない。どういう土地利用をするのか現地を見るべきではないか。現地をみなければ分からない。

篠森敬三委員 今後40年間、組織が県市二系統なのか。あり方を変えていく必要がある。

斉藤明彦委員 単館であっても40年後、今のやり方でいける可能性はほぼない。その時期時期に方法は変えていく。進化を担保するために面積の余力は大事。今必要な機能だけをカチっとコンパクトにまとめてもあっという間に限界がくる。余力をどう持たせ、進化に耐えられる図書館にしていくのかが大切。進化型図書館には専門性の高い司書の配置が必要。児童書の全点購入をすべきだ。

植松貞夫委員 何故一体化なのか。市民図書館がこれを放棄するとか、県立はこの機能はやらないとかいう提案がないと、一体型整備と単純合築のどこが違うのか。結局、県立市民型図書館と高知市民図書館が二つあるだけの話になる。同じ市の中で市立と県立が同じサービスをしながら併存することが、県立の姿を歪めてきた。二つの館が入るのを機会に県市が機能を上手く切り分けることで、総体してのサービスの質をあげることを追求することが必要。

片岡卓宏委員 いつまで県市を分けるのか。視力障害者のヒアリングを。

内田純一副委員長 県市図書館の機能は明らかに違う。新しい図書館のイメージを話せば話すほど高知市民図書館がやってきたことが機能低下に陥るのではないかという不安もある。県立図書館、市民図書館、このままでいいのかを具体的に踏み込んで考えていきたい。(2010年12月5日 高知民報)