2010年11月21日

コラム南炎 鳥取県立図書館

「日本一の県立図書館」と称される鳥取県立図書館。関係者と話をしていると、つくづく「違うものだなあ」とため息が出そうになる▼鳥取県は何をやるにしても因幡鳥取と伯耆米子に分断されるお国柄で、平成2年まで県立図書館は鳥取市と米子市にあった。しかし、60万県民の隅々にまで図書館サービスを徹底するためには市町村図書館が第一線、県立はそれを後方で支える第二線であるべきとの考えに基づき、県立米子図書館を米子市に移管。県立を鳥取ひとつにした経過がある▼故に教育委員会だけでなく、行政の隅々まで県立図書館の役割が深く認識されており、知事や教育長が交代しても簡単には揺るがない。県立の役割を県教委が明確に認識できず、外部の検討委員に何かといえば委ねる高知県とは様相が随分と異なる。それ以上に違いを感じたのは司書や学芸員など現場の専門職を大切にする雰囲気。図書館は無料貸本屋ではなく県を興していくための人づくりの土台という徹底した気風だった。その典型が図書館の県庁組織内の位置付け▼高知県立図書館は県教委生涯教育課の出先機関で、課の下に置かれている。鳥取県立は「我々は課の一出先ではない。教育長直属で館長が予算折衝もするし議会答弁もする。県民に近いところを県政が重視しているから」。高知市民図書館の組織的な位置付けは鳥取県と同じあるが、これだけで高知県政における図書館の位置付けの軽さがよく分かる。全国最低レベルの図書購入費もなるべくなっている。このような現状を直視し、抜本的に改める議論もないままに、県が口を開けば言う「中核市の責任」、「県市の役割分担」もどこかに吹き飛ばし、県市もたれあうような合築が先行している現状は相当危うい。(ひ)(2010年11月21日 高知民報)