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高知市桟橋4丁目 「ひかりあれ土佐」 |
アルコール依存症などからの「更正」と称し、生活保護受給者を集団生活させて保護費を全額徴収し一括管理、受給者本人にはわずかな額しか渡さない「ひかりあれ土佐」(高知市桟橋通4丁目)(2010年4月16日開設)の取材内容(10月29日に同施設を訪問)を引き続きレポートします。取材には前田繁治・四国地区代表「ひかりあれ土佐」責任者が対応しました。
桟橋通4丁目の施設は元店舗のような作り。ガラス張りで中の様子が外から丸見えという異様な環境。宿舎として歩いていける距離にアパートを借り上げているとのことでしたが、この日は訪問することはできませんでした。
前田責任者は高知市役所が認める「合法的」な範囲での活動であることを強調しましたが、10月28日の電話取材では、「保護費は一切渡さない」と述べていたにもかかわらず、この日は「役職手当」があり個別に一定額を渡していると回答するなど発言にブレが見られました。
入所者に直接話をすることも許されましたが、判で押したように保護費の全額徴収について不満は言わず「管理してもらえてありがたい」と述べていたのが特徴的でした。東北などから連れてこられた人が大半で、現金をほとんど持たされないまま相部屋での集団生活、3食すべて集団で食事、密室での「ミーティング」が連日繰り返されています。このような状況下の精神状態で自由な判断ができているのかは疑わしいものです。
自由意思で保護費を渡していたとしても、全額徴収は論外。使途の明細を示し、残額を本人に返却するなどしなければ、生活保護費の使途として不適切であることは当然でしょう(現在使途明細は示されていない)。
専門家によらない「ミーティング」と事実上の「軟禁」を繰り返すだけの内容で自立につながるのかどうかについても、高知市の責任でチェックする必要があります。
高知市生活福祉課は「ひかりあれ土佐」から事前に相談を受け、これらの条件を飲む形で保護費をすでに支給していますが、同市健康福祉部内の受け止めは複雑で、この判断に批判的な幹部職員も少なくありません。
藤原好幸・同市福祉事務所長の話 難しい問題だ。保護を切ったらその人たちはどうなるのか。受皿を合わせて考えなければ解決にならない。保護費の使途について内訳を出させるかどうかは、もう少し他県の例を調べる。全国的に歩調を合わせ高知市だけが突出しないように対応する。
下司孝之・下司病院(アルコール依存症の治療に取り組んでいる)事務管理部長の話 「ひかりあれ」のやり方には問題がある。アルコール依存症の治療は地域の中で仲間とともに治していくのが大原則だが、ここは断酒会にもAAにも出てこない。囲いこんだらダメ。保護費は全額本人に渡し、必要な額を払わせるべきだ。
「ひかりあれ土佐」の取材記録
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1日のタイムスケジュール(上)
ここで当番が三食を自炊する(下) |
前田責任者 「ひかりあれ」は法人ではなく任意団体、本部は福岡。四国では高知だけだ。4月16日からここに入った。高知市役所には事前に同じ居住で保護申請しても大丈夫かと相談している。保護費は自主的に納めてもらっている。受け取りは手払い。通帳振り込みではない。入所してから時間がたった人、役割を担った人には手当を渡している。金額は個人によって様々。早い話が役職手当。上限は特にない。
預かった保護費の使途の内訳は出していない。市役所は理解してくれている。はじめは出してくれということだったが、事情を説明したら提出しなくてもよいことになった。本部への送金は必要。どんな組織や会社でも運営費はかかる。それと同じ。1人あたりいくらで上げている。各個人に内訳は説明している。
利用者は今は10人。男ばかり。女がいるのは福岡だけ。ここは東北出身者が多い。10人全員が生活保護受給者だ。全国で430人ほどいる。家族に捨てられた人ばかり。
高知の人は高知に置かない。甘えが出て6時から23時までのきびしいスケジュールに耐えられない。ミーティングでは自らの体験を話す。断酒会にはいかない。AA(アルコホーリクス・アノニマス)には参加する。専門の相談員や資格者は全国どこもいない。私もアルコール依存症の体験者。体験者が気持ちが一番よく分かる。
生活に困っている人を助けるのではなく、病気の人を助ける所だ。定期的に下司病院で診断を受けさせている。軽作業が可能な者はハローワークに通い、求職活動している。役所の指導のもとで動いている。
住む部屋は個室ではない。3〜4人づつ。1人で生活させるのは無理。隠れて飲む。那覇市は断酒会にいけというのでやめたが、問題になったのはここだけだ。仙台市は報道されただけで今も存続している。北海道新聞も西日本新聞もたたいてきたが、それきり。なぜなのか。書くなら徹底的に書いてくれ。
自由に退去してもらって結構。自由だ。オリはない。そこまで束縛はしない。私はカトリック系だが説教はしない。宗教は強制しない。
利用者Aさん(山形出身、43歳、競輪、パチンコなどギャンブル依存。入所は6月から) 以前は新聞配達をしていた。これまで自立しようと思っても金の自己管理ができなかった。(ひかりあれに)お世話になってなんとかやれている。一生ここにいるつもりはない。保護費を全額渡すことは、こういう共同生活なので納得している。金だけとっていかれるのではなく、ミーティング、作業、食事もある。食事は当番で三食つくる。訓練費として月に3000円いただいている。いくら保護費が出ているかは知らない。4日に車に載せられて役所にもらいにいき、すぐ渡している。
貧困ビジネスについては知っていたが、そういうものとは違うと思う。ここにきてからギャンブルはしていない、やろうにもできない状況。今まではやめたくてもできなかった。不満はない。人それぞれだ。ここにいなければホームレス。今はそういう状況ではない。家族はいない。帰るところはない。部屋は6畳に2人。トイレは各部屋にあるが、風呂と洗濯は共同。
利用者Bさん(栃木出身、51歳、ギャンブルとアルコール依存。入所1カ月) 元土木作業員で飯場を転々としていたが、金をもらうと遊んでしまって続かなかった。 上野公園でブラブラしていたら、「ひかりあれ」のメッセンジャーに声をかけられついて行った。高知を自分で希望した訳ではない。金があると使ってしまうので、預かってもらうほうがよい。月3000円もらい、飴などを買っている。不満は全然ない。ありがたい。帰るところはない。ここにいれば心配はない。食事を共同でつくることなどは勉強になり将来の役に立つ。(2010年11月14日 高知民報)
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