2010年11月7日

新図書館基本構想検討委 合築案に慎重意見続出 スケジュールに乱れ

多数の傍聴者が押し寄せた第1回検討委(10月30日)
高知県立図書館と高知市民図書館本館を追手前小跡地で機能統合して一体的に整備するための基本構想を策定する「新図書館基本構想検討委員会」が10月30日、第1回目の会合を高知市のあんしんセンターで開きましたが、多数の委員が合築の是非よりも必要な両図書館の機能の議論を先行させることを求め、直ちに合築案の検討に入りたい県・高知市側とのズレが浮き彫りになりました。(検討委員一覧は後述)

検討委員会の冒頭、中沢卓史県教育長が「合築に懸念の声もある。組織がミッションを持ってやれば可能だと考えるが、外部の目から単独、一体型の比較検討をお願いしたい。合併特例債を活用するため時間的にはきびしい。全国に例のない図書館をつくる、時間がないという二つの命題がある」などとあいさつ。

委員長には、前教育委員長の宮地弥典氏が、川田米実・土佐町教育長に推薦され決定しました。

この日の議論テーマは「単独と合築の比較検討」。この問題はこの日で終わらせ、次回からは土地利用の具体的な内容に入っていくことを県市は想定していましたが、宮地委員長、川田米委員以外に、この場で積極的に合築を認める意見はでず、もっと慎重な検討を求める声が多数を占め、今後の議論の進め方について何も確認しないまま散会しました。

次回委員会は11月23日(火、祝)の午後の予定。

会合を終えた検討委員からは「県立の役割をもっと整理しないとだめだ。その議論をこの検討委でしなければならないのだが、時間が足りるのか」という声が聞かれました。中沢県教育長は「合築でいくという話には、まだならなかったので、今後の検討の進め方は委員長と相談して決める」とコメントしました。

同委員会の検討委員は以下(敬称略)

委員長=宮地弥典(前県教育委員長)、副委員長=内田純一(高知大教育学部教授)、植松貞夫(筑波大大学院図書館情報メディア研究科長)、片岡卓宏(県身体障害者連合会長)、加藤勉(高知大人文学部教授)、川田恵美子(高知市PTA連合会副会長)、川田米実(土佐町教育長)、斎藤明彦(元鳥取県立図書館長)、篠森敬三(高知工科大付属情報図書館長)、常世田良(日本図書館協会事務局次長)、森尾靖子(高知市立市民図書館協議会委員)、柳川明彦(室戸市立市民図書館長)、吉沢文治郎(ひまわり乳業社長)、吉本寛子(土佐市立市民図書館長)

討議の主な内容
左上から、加藤、斉藤、常世田、森尾、吉沢、吉本、宮地委員(敬称略)


「(合築に)賛否両論があり強固な議論をするには支持が足りない。県民からやろうという負託を受けられているのか」(加藤勉委員)

「合築はなかなかむずかしい。それぞれの図書館の進化する方向が違う」(斉藤明彦委員)

「非常に慎重に検討していく必要がある。文部科学省も重大な関心を持っている。事務局の説明はコスト面が中心。機能と役割を詰めて行く中で合築が可能かという議論をこれからしていかなければならない」(常世田良委員)

「図書館に関心のない人が見たら同じに見えるかもしれないが、県市の図書館は明らかに役割が違う。役割が違うものが一緒になるのはなかなか難しい。不安を感じる」(森尾靖子委員)

「これまで文化行政への力の入れ方が非常に欠けていた。建物を一緒にするしないの前に、高知県の将来のための理念の話をしなければならないが、その時間があるのかが問題だ。大変なものを引き受けてしまった」(吉沢文治郎委員)

「一体化には不安がある。広域自治体と基礎自治体の違いだ。一律にはいかない」(吉本寛子委員)

「合築するしないを決めるのは、この委員会ではない。県議会、市議会。一体型図書館の構想をつくるための意見をまとめるのがこの委員会の使命だ」(宮地弥典委員長) (2010年11月7日 高知民報)